アップリカが特許権侵害(最高裁判決)

2014年11月23日 23:43

 「ごみ貯蔵機器事件(大合議判決)」の上告を退ける決定が下りました。弁理士理の論文として論点になっていたのは、特許法の損害賠償の額に関する推定規定102条2項です。

第百二条
2 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、
その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。


 102条2項は「特許権者の実施が要件」と勉強している受験生も多いと思います。しかし、本事案では「特許権者が不実施でも102条2項が適用される」とされました。判決の射程範囲は狭いですが、今後の論文の記述の際には注意してください。

 知財高裁のサイトでは、要点を以下のように説明がされています。

(1)要点
特許権者において,当該特許発明を実施していることを要件とするものではなく,特許権者に,侵害者による特許権侵害がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,同項の適用が認められると解すべきであるとされた事例。


 論旨については、大合議判決の判例に当たって、理由を含めて再現できるようにしておきましょう。

【知財高裁平成25年02月01日】ごみ貯蔵機器事件

 また、判例百選の第86事件でも「特許権者の実施の要件は課されない」と指摘しています。参考にしてください。

特許判例百選第4版第86事件「3 権利者による特許実施の要否」
『特許権者が特許権を実施していることを要するというのが、多数説である。その理由とするところは、権利者が特許権を実施していない場合には、およそ権利者の逸失利益を観念できず、推定規定適用の前提を欠くという点にあるようである。しかし、権利者による特許権の実施に先んじて侵害品が市場において高い占有率を占めるに至ったために、権利者が自らの実施を断念する場合もあり得るところ、・・・
・・・同条2項の適用については、必ずしも権利者が特許権を実施していることを前提とするものではなく、逸失利益を観念することが可能である限り同項による損害額を請求することができると解したい。』


 他の大合議判決については、こちらのテキストにまとめてあります(最新の2事件は未掲載です)。メルマガ登録で閲覧パスワードをお送りしています。ご活用ください。
https://www.mesemi.com/news/%E5%A4%A7%E5%90%88%E8%AD%B0%E5%88%A4%E6%B1%BA1/

情報ソース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141120-00000101-jij-soci
https://www.ip.courts.go.jp/hanrei/g_panel/index.html