出願人の使用要件は必要か?

2015年05月06日 19:40

 H26年度の短答本試、第26問(第5枝)に「金銭的請求権」の問題が出題されています。

(ホ) 商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたとき、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対して、商標権の設定の登録の日から3年以内であれば常に金銭的請求権に基づき支払いを求めることができる。

第十三条の二
商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができる。


 「損失の発生」が要件となる点で、特許法の補償金請求権とは異なることを理解できている受験生は正解を導くことができたことでしょう。青本では、以下の解説がされています。

<青本19版(13条の2)>
 損失が発生していることを商標登録出願人(請求人)が認識した上で初めて請求するものであるため、たとえ相手方が悪意で使用していても警告は必要であり、悪意で使用されていても、損失が発生していなければ警告をしても金銭的請求権は生じない。


 では、本短答本試の事例に「損失が発生していた場合」との条件が加わっていた場合は、正解は逆になっていたのでしょうか?

 青本の解説では、さらに「出願人の使用」要件が必要であると説明されています。

<青本19版(13条の2)>
 金銭的請求権の創設の趣旨が商標に化体した業務上の信用を保護することにあり、商標登録出願人に業務上の損失を与えた事実の存在を当該請求権の発生要件としたことから、当該請求権の発生の前提として、出願人による出願に係る商標の使用の事実が必要とされることとなる。


 金銭的請求権の創設の「きっかけ」がマドプロにある点、また、他法域の判例ではありますが「特102条2項の特許権者自身の実施は不要」と判事した大合議判決もあることから、「出願人の使用」要件は今後の興味深い論点になりそうです。

情報ソース
https://www.jpo.go.jp/torikumi/benrishi/benrishi2/pdf/h26benrisi_tan/question.pdf