異議立て復活!H15改正前との違いは?

2014年12月09日 19:17

 H15改正前からの変更条文(主たる条文)は以下になります。

(1)115条第2項
(2)118条
(3)120条の5 第2項4号、第3項から8項
(4)120条の7


(1)115条第2項について、

[H26改正] 前項の規定により提出した特許異議申立書の補正は、その要旨を変更するものであつてはならない。ただし、第百十三条に規定する期間が経過する時又は第百二十条の五第一項の規定による通知がある時のいずれか早い時までにした前項第三号に掲げる事項についてする補正は、この限りでない。

[H15改正前] …ただし、第百十三条に規定する期間が経過するまでにした前項第三号に掲げる事項についてする補正は、この限りでない。

 申立書の要旨を変更することができる期間が変更(短縮)されています。6月の異議申立期間内であっても訂正請求がされたことによる意見書提出の通知があった後は、申立書の要旨変更が制限されることになります。


(2)118条1項について、

[H26改正] 第百十八条特許異議の申立てについての審理は、書面審理による。
[H15改正前] …ただし、審判長は、特許権者、特許異議申立人若しくは参加人の申し立てにより、又は職権で、口頭審理によるものとすることができる。

 口頭審理への変更が制限されています。注意が必要なのは、商標法では、口頭審理への変更の規定が残ります。

[商標法43条の6] 登録異議の申立てについての審理は、書面審理による。ただし、審判長は、商標権者、登録異議申立人若しくは参加人の申立てにより、又は職権で、口頭審理によるものとすることができる。

 短答では、たとえば、「特許異議の申し立てについての審理は、審判長の職権で口頭審理とすることができる。○か×か?」といった出題が予想されますので、引っかからないように、直前チェックをして本番に臨みましょう。

 H15年の改正法解説書には特に問題として指摘されていませんでしたが、「特許庁からのH26年改正法の説明」では、特許異議申立人の負担軽減(特許庁に出向かないと口頭審理ができない)を目的としているとの説明がされていますので、論文で改正趣旨が問われた場合には、書いても良いポイントとなります。

(3)120条の5 第2項4号、第3項から8項について、
 第2項4号(請求項の引用関係の訂正に関する規定)、および、第3項から8項(訂正請求に関する規定)までの規定が追加されています。

[120条の5第5項] 審判長は、第一項の規定により指定した期間内に第二項の訂正の請求があつたときは、第一項の規定により通知した特許の取消しの理由を記載した書面並びに訂正の請求書及びこれに添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面の副本を特許異議申立人に送付し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、特許異議申立人から意見書の提出を希望しない旨の申出があるとき、又は特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるときは、この限りでない。

 H15年法改正時に指摘されていた「異議申立ての利用者には審理中に意見を述べる機会が十分でないことについて不満があり、・・・」については、「訂正請求があった場合に意見書が提出できる」ことが新たに規定されています。特許異議申立ての制度趣旨について問われた場合には書く必要があるポイントとなります。 

 120条の5関係は、さらに「無効審判」と比較し、その違いを理解しておくことが重要です。

<無効審判>
[134条の2第4項] 審判長は、第一項の訂正の請求書及びこれに添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面を受理したときは、これらの副本を請求人に送達しなければならない。
[134条の2第5項] 審判官は、第一項の訂正の請求が同項ただし書各号に掲げる事項を目的とせず、又は第九項において読み替えて準用する第百二十六条第五項から第七項までの規定に適合しないことについて、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。この場合において、当該理由により訂正の請求を認めないときは、審判長は、審理の結果を当事者及び参加人に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならない。 


 短答対策としても、正確に覚えていないと間違えてしまう規定で、狙われる可能性が高い条文です。まず、主体の相違です。無効審判は「審判長」と「審判官」が登場しますが、異議申立ては「審判長」のみです。

 「申し立てない理由についても」の規定は無効審判にはありますが、異議申立てにはありません。異議申立ての審理における職権審理については120条の2で担保されていますので規定する必要がないと解釈できますが、審判請求の審理における職権審理は153条で同様に規定されているので、なぜ、134条の2第5項で明示的に規定されているのかは改正法解説書を待つしかないようです。

 意見書の提出についても相違があります。無効審判は「訂正の請求を認めないとき」との条件が付いています。一方の異議申立ては「提出を希望しない」などの条件が付いています。条件を入れ替えて出題される可能性がありますので、注意が必要です。

 短答では、さすがに「送達」と「送付」を入れ替えて出題してくることは無いと思いますが、「送付しなければならない」を「送付することができる」に変えたり、「審理することができる」を「審理しなければならない」に変えて問題を作る可能性はありますので、十分に注意しましょう。


(4)120条の7について、

 [H15改正前] 120条の7(決定の確定範囲)の規定なし。

 H23改正で新たに規定された167条の2第1号と3号(訂正の請求に係る審決の確定範囲)に対応する規定です。同条と併せて「決定(審決)の確定範囲」について、理解を深めておきましょう。

情報ソース
https://www.meti.go.jp/press/2013/03/20140311001/20140311001-6.pdf