判例の宝庫(最高裁)

【最判平成12年01月27日】クロム酸鉛顔料事件

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 同一の特許に対して複数の者が無効審判請求をすることは禁止されておらず、特許を無効とすることについて利益を有する者は、いつでも当該特許に対して無効審判請求をすることができるのであり、この特許を無効とすることについての利益は、無効審判請求をする者がそれぞれ有する固有の利益である。しかし、ある特許の無効審判請求につき請求不成立審決が確定し、その登録がされた場合において、更に同一の事実及び同一の証拠に基づく無効審判請求の繰返しを許容することは、特許権の安定を損ない、発明の保護、利用という特許法の目的にも反することになる。

 そこで、特許法一六七条は、無効審判請求をする者の固有の利益と特許権の安定という利益との調整を図るため、同条所定の場合に限って利害関係人の無効審判請求をする権利を制限したものであるから、この規定が適用される場合を拡張して解釈すべきではなく、文理に則して解釈することが相当である。 仮に、確定した請求不成立審決の登録により、既に係属している同一の事実及び同一の証拠に基づく無効審判請求が不適法になると解するならば、複数の無効審判請求事件が係属している場合において、一部の請求人が請求不成立審決に対する不服申立てをしなかったときは、これにより、他の請求人が自己の固有の利益のため追行してきたそれまでの手続を無に帰せしめ、その利益を失わせることとなり、不合理といわざるを得ない。

 

【最判平成11年07月16日】カリクレイン事件

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 2 方法の発明と物を生産する方法の発明とは、明文上判然と区別され、与えられる特許権の効力も明確に異なっているのであるから、方法の発明と物を生産する方法の発明とを同視することはできないし、方法の発明に関する特許権に物を生産する方法の発明に関する特許権と同様の効力を認めることもできない。そして、当該発明がいずれの発明に該当するかは、まず、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて判定すべきものである(同法七〇条一項参照)

 4 特許法一〇〇条二項が、特許権者が差止請求権を行使するに際し請求することができる侵害の予防に必要な行為として、侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあっては、侵害の行為により生じた物を含む。)の廃棄と侵害の行為に供した設備の除却を例示しているところからすれば、【要旨第二】同項にいう「侵害の予防に必要な行為」とは、特許発明の内容、現に行われ又は将来行われるおそれがある侵害行為の態様及び特許権者が行使する差止請求権の具体的内容等に照らし、差止請求権の行使を実効あらしめるものであって、かつ、それが差止請求権の実現のために必要な範囲内のものであることを要するものと解するのが相当である。

 

【最判平成10年02月24日】ボールスプライン軸受け事件

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 1 特許権侵害訴訟において、相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)が特許発明の技術的範囲に属するかどうかを判断するに当たっては、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて特許発明の技術的範囲を確定しなければならず(特許法七〇条一項参照)、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合には、右対象製品等は、特許発明の技術的範囲に属するということはできない。しかし、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、(1)右部分が特許発明の本質的部分ではなく、(2)右部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、(3)右のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、右対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。ただし、(一)特許出願の際に将来のあらゆる侵害態様を予想して明細書の特許請求の範囲を記載することは極めて困難であり、相手方において特許請求の範囲に記載された構成の一部を特許出願後に明らかとなった物質・技術等に置き換えることによって、特許権者による差止め等の権利行使を容易に免れることができるとすれば、社会一般の発明への意欲を減殺することとなり、発明の保護、奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に反するばかりでなく、社会正義に反し、衡平の理念にもとる結果となるのであって、(二)このような点を考慮すると、特許発明の実質的価値は第三者が特許請求の範囲に記載された構成からこれと実質的に同一なものとして容易に想到することのできる技術に及び、第三者はこれを予期すべきものと解するのが相当であり、(三)他方、特許発明の特許出願時において公知であった技術及び当業者がこれから右出願時に容易に推考することができた技術については、そもそも何人も特許を受けることができなかったはずのものであるから(特許法二九条参照)、特許発明の技術的範囲に属するものということができず、(四)また、特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど、特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか、又は外形的にそのように解されるような行動をとったものについて、特許権者が後にこれと反する主張をすることは、禁反言の法理に照らし許されないからである。

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