特許法(過去問)

H26過去問 弁理士 論文 特許法 【問題Ⅱ】 1.

 甲は、靴紐の穴の構造に特徴がある靴に係る発明イを自ら完成し、平成23 年6月1日、発明イを特許請求の範囲とする特許出願をしたところ、平成25 年6月3日、発明イについての特許権Pの設定登録がされた。
 以上のことを前提として、以下の各設問に答えよ。ただし、特許権Pに係る特許に無効理由はないものとする。

1.乙は、平成22 年12 月1日、発明イと同一の発明を自ら完成させた。そして、平成23 年5月2日までに、発明イの技術的範囲に属する靴aの試作品を完成させ、靴aの製造装置Mを発注するととともに、販売業者らに対し、それらの事実を伝え、発注があれば直ちに日本国内で靴aの製造を開始することを説明した。

 乙は、平成23 年8月1日、日本国内の工場に製造装置Mを1機設置し、靴aの販売に向けた製造を開始した。さらに、乙は、平成25 年10 月1日、製造装置Mを3機増設し、現在に至るまで靴aの製造を継続している。

 また、乙は、平成26 年2月3日以降、靴aの靴紐の穴の構造を変えずに、靴底の厚さが1割増加した靴bを製造している。

 甲は乙を被告として、特許権Pに基づき靴a及びbの製造の差止めを求める訴えを提起した。


 まず、「無効理由はない」ことに注意。設問(1)(2)に目を向けると「否認」「抗弁」を訊いていることが分かるので、抗弁では先使用、消尽、禁反言の可能性をメモをして先に進む。

 「製造装置Mを発注」、「発注があれば直ちに製造」のヒントから「実施の準備」に関する判例(【最判昭和61年10月03日】ウォーキングビーム炉事件)の可能性をメモ。

 同様に、「製造装置Mを3機増設」のヒントから、「実施又は準備をしている事業の目的の範囲」に関する解釈を訊いている可能性をメモ。

 さらに、「靴底の厚さが1割増加した靴b」から「実施又は準備をしている発明の範囲」の解釈(上記判例)を訊いている可能性をメモ。


 設問1.(1)と(2)、さらに設問2.の全てが、「考えられる主張」と「認められるか否か」を訊いているので、項目立てとしては共通化し、

  1.考えられる主張

  2.要件検討

  3.結論

とすると、記載漏れ防止と、論述の流れを良くすることができます。


H26過去問 弁理士 論文 特許法 【問題Ⅱ】 1.(1)

(1)乙が、靴aに係る請求について、請求を棄却する旨の判決を得るためにすることが考えられる主張を挙げた上で、その主張が認められるか否か、述べよ。

 「準備」に関する要件定立として、青本79条の記載「その事業に必要な機械を発注してすでにでき上がっているとか、
雇用契約も結んで相当宣伝活動をしているような場合は事業の準備の中に含まれるであろう。」をベースとした記載も考えられますが、本事案では「、靴aの製造装置Mを発注するととともに、販売業者らに対し、それらの事実を伝え、発注があれば直ちに日本国内で靴aの製造を開始することを説明した。」とあることからも、判例(【最判昭和61年10月03日】ウォーキングビーム炉事件)からの要件定立とすべきでしょう。

 「製造装置の増設」が「事業の目的の範囲内」か否かが問題となりますが、青本の記載をベースにして「事業設備の拡大は認められる」とすれば良いでしょう。


設問1.(1)について、

1.aについて考えられる主張

 (1)否認

 (2)先使用権の抗弁

2.要件検討

 (1)直接当て嵌め(知得ルートの正当性、出願前実施等、国内)

 (2)準備について、

  ①要件定立(判例)

  ②当て嵌め、結論

 (3)「事業の目的の範囲内」について、

  ①要件定立(青本)

  ②当て嵌め、結論

3.結論(認められる/認められない)


H26過去問 弁理士 論文 特許法 【問題Ⅱ】 1.(2)

(2)乙が、靴bに係る請求について、請求を棄却する旨の判決を得るためにすることが考えられる主張を挙げた上で、その主張が認められるか否か、述べよ。


設問1.(2)について、

1.bについて考えられる主張

 (1)否認

 (2)先使用権の抗弁

2.要件検討

 (1)直接当て嵌め(知得ルートの正当性、出願前実施等、国内)

 (2)「発明の範囲内」について、

  ①要件定立(判例)

  ②理由(判例:語呂合わせ「趣旨」「公平」「酷」「文理」)

  ③当て嵌め、結論

 3.結論(認められる/認められない)


H26過去問 弁理士 論文 特許法 【問題Ⅱ】 2.

 甲は、発明イの技術的範囲に属する靴cを国内で製造販売している。

 丙は、一般消費者によって使用されることにより靴底が磨耗しているものの、靴底以外の部分は新品に近い状態の靴cを回収し、靴cの靴紐の穴の構造を変えずに、靴底部分を新品に貼り替え、リサイクル品である靴dとして販売している。

 また、一般に、業者が靴の靴底部分を貼り替えてリサイクル品として販売することは広く行われている。

 甲は丙を被告として、特許権Pに基づき靴dの製造の差止めを求める訴えを提起した。丙が請求を棄却する旨の判決を得るためにすることが考えられる主張を挙げた上で、その主張が認められるか否か、述べよ。


 「リサイクル」のヒントから、判例(BBS事件、インクタンク事件)の可能性をメモして先に進む。

 インクタンク事件で判事された要件への当て嵌めさせる問題で、難しい設問となっています。要件としてはキーフレーズとなっている「新たな製造」への該否を挙げ、本問では「一般に広く行われている靴底部分のみの貼り替え」は補修行為である新たな製造に該当せず、よって非侵害の主張が可能であると論述すれば良いでしょう。


【最判平成19年11月08日】インクタンク事件

 同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは,特許権者は,その特許製品について,特許権を行使することが許されるというべきである。そして,上記にいう特許製品の新たな製造に当たるかどうかについては,当該特許製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか,取引の実情等も総合考慮して判断するのが相当であ(る)。

 

設問1.(2)について、

1.考えられる主張

 (1)消尽の要件定立

 (2)理由

2.要件検討

 (1)直接当て嵌め(消尽)

 (2)「リサイクル品の消尽」について、

  ①要件定立(判例)

  ②当て嵌め、結論

 3.結論(認められる/認められない)


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