「丸正餃子店」と「餃子の丸正」が和解
少々複雑ですので、まずは事案の整理から。
有限会社丸正餃子店
・原告
・「丸正餃子店」を運営
・株式会社丸正を被告とし、不正競争行為差止等請求訴訟を提起
株式会社丸正
・被告
・「餃子の丸正」を運営
和解内容
・株式会社丸正所有の「餃子の丸正」の商標を、有限会社丸正餃子店へ譲渡
株式会社丸正は、屋号を「中華丸正」と改めて運営
つまり、「被告が屋号を変えて、被告の商標権を原告へ譲渡」することで和解が成立したとの事です。特殊な事案に思えますが、未登録周知商標と登録商標との出所混同に対する対処(和解)方法として参考になります。
さて、「原告(丸正餃子店)」は譲渡された商標「餃子の丸正」を使うのでしょうか? 使用しなければ、3年後には、不使用取り消し審判の対象になる可能性がありますが、この場合、50条の適用を受け得るのでしょうか?
検討が必要なのは、2項の但し書きです。正当理由があるときは、不使用取り消し審判を免れます。
50条2項
・・・
ただし、その指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。
さらに、「原告(丸正餃子店)」は譲渡された商標「餃子の丸正」に係る商標権の使用ではなく、類似する商標「丸正餃子店」を使用すると「不正使用」の適用が問題となりそうです。この場合、51条の適応を受け得るのでしょうか?
検討が必要なのは、「品質誤認」と「出所混同」の要件です。商標権の譲渡人が屋号を変更しているので、時間が経過すれば適用はなくなるものと思います。
51条 商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。
「原告(丸正餃子店)」の次のアクションは、自己の未登録商標の出願でしょうね。他人の登録類似商標に係る商標権の譲渡を受けているので他に登録類似商標がなければ、4条1項11号の適用を回避でき、登録される可能性が出てきます。4条1項11号拒絶理由に対する措置(もらう、つぶす、かわす)の「もらう(譲渡)」により、同号を回避できる可能性のある事案と言えます。
なかなか面白い事案ですね。
情報ソース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150113-00000021-asahi-soci
https://www.marusyougyouza.com/
https://gyouza.co.jp/pc/