「統一がある」と「統一的な美感を起こさせる」は違う?

2021年09月06日 09:50

令和元年改正にて、内装デザインの保護を目的として、「内装の意匠」の規定が新設されました(8条の2)。


(内装の意匠)
第八条の二 店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾(以下「内装」という。)を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠は、内装全体として統一的な美感を起こさせるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。


組み物の意匠(8条)と同様に「一意匠一出願(7条)の例外規定」ですが、8条の要件が「全体として統一があるとき」であるのに対して、8条の2は「全体として統一的な美感を起こさせるとき」となっており、両者の相違について疑問が生じます。

青本では、内装の意匠(8条の2)の改正趣旨として、以下の説明がされています。


青本:
内装意匠の本質は、家具や什器の組合せや配置、壁や床の装飾等によって統一的な美感が醸成される点にあることから、内装を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠が内装全体として統一的な美感を起こさせるときに限り、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる旨規定した。


青本の解説でははっきりしないので、改正法解説書に当たってみましょう。

改正法解説書では、従来の規定の問題点を明示しています。


改正法解説書:
組物を構成する物品に係る意匠については、「組物全体として統一があるとき」に限り、意匠登録を受けることができるとされるが、内装デザインとは、家具や什器の組合せや配置、壁や床の装飾等によって醸成される統一的な美感を起こさせるものであり、組物の意匠とは性格を異にするものである。よって、「全体として統一があるとき」にのみ保護することとしている組物の意匠として保護することは適切ではない。


この説明内容からすると、「統一的な美感を起こさせる」の方が広い概念であると言えそうですが、具体例が無いので理解が深まりません。

そこで、審査基準を見てみると、8条と8条の2では、以下の事例が書かれていて、内装の意匠(8条の2)には④と⑤の具体例が追加されているのがわかります。


8条の例示:
(1)各構成物品等の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合が、同じような造形処理で表されている場合
(2)各構成物品等により組物全体として一つのまとまった形状又は模様が表されている場合
(3)各構成物品等の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合によって、物語性など組物全体として観念的に関連がある印象を与えるものである場合

8条の2の例示:
① 構成物等に共通の形状等の処理がされているもの
② 構成物等が全体として一つのまとまった形状又は模様を表しているもの
③ 構成物等に観念上の共通性があるもの
④ 構成物等を統一的な秩序に基づいて配置したもの
⑤ 内装の意匠全体が一つの意匠としての統一的な創作思想に基づき創作されており、 全体の形状等が視覚的に一つのまとまりある美感を起こさせるもの


⑤は、審査基準にもその具体的な事例の説明がないことからも、具体例というよりは「包括規定」のような印象を受けます。

事例④は「配置」についての統一感の例示と理解でき、審査基準には「【事例4】構成物を統一的な秩序に基づいて配したもの」として具体的なデザインが示されていますので、審査基準に当たってみてください!


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