パリ条約の保護対象
2016年05月12日 20:09
パリ条約の保護対象は、1条(2)に規定されています。
第1条 同盟の形成・工業所有権の保護の対象
(2) 工業所有権の保護は,特許,実用新案,意匠,商標,サービス・マーク,商号,原産地表示又は原産地名称及び不正競争の防止に関するものとする。
4法(特実意商)中、パリ条約(1条~12条)上の登場回数が少ないのは、実用新案、意匠、役務商標(サービス・マーク)が「候補」に挙がってきそうでが、単純にカウントしてみると以下の「登場回数」になっています。
・実用新案:11回
・意匠:14回
・サービス・マーク:4回
ダントツに少ないのは「サービス・マーク」です。
第6条の6 サービス・マークの保護
同盟国は,サービス・マークを保護することを約束する。同盟国は,サービス・マークの登録について規定を設けることを要しない。
6条の6で、タイトルを含めて3回登場するので、「サービス・マーク」は1条(2)と6条の6しか登場しないことが分かります。
すなわち、パリ条約上は、サービス・マーク(役務商標)は、優先権(パリ4条)の対象となっていないことになります。
この点に関しては、商標法9条の2で「手当」がされていることは、ご存知かと思います。
(商標法)
第九条の二 パリ条約の同盟国でされた商標(第二条第一項第二号に規定する商標に相当するものに限る。)の登録の出願に基づく優先権は、同項第一号に規定する商標に相当する商標の登録の出願に基づく優先権についてパリ条約第四条に定める例により、これを主張することができる。
意外に「登場回数」が多いのが「意匠」で、4条、5条等に規定があります。
第4条 優先権
A(1) いずれかの同盟国において正規に特許出願若しくは実用新案,意匠若しくは商標の登録出願をした者又はその承継人は,他の同盟国において出願することに関し,以下に定める期間中優先権を有する。
C(1) A(1)に規定する優先期間は,特許及び実用新案については12箇月,意匠及び商標については6箇月とする。
E(1) いずれかの同盟国において実用新案登録出願に基づく優先権を主張して意匠登録出願をした場合には,優先期間は,意匠について定められた優先期間とする。
第5条 不実施・不使用に対する措置,特許・登録の表示
B 意匠の保護は,当該意匠の実施をしないことにより又は保護される意匠に係る物品を輸入することによつては,失われない。
D 権利の存在を認めさせるためには,特許の記号若しくは表示又は実用新案,商標若しくは意匠の登録の記号若しくは表示を産品に付することを要しない。
第5条の5 意匠の保護
意匠は,すべての同盟国において保護される。
第11条 博覧会出品の仮保護
(1) 同盟国は,いずれかの同盟国の領域内で開催される公の又は公に認められた国際博覧会に出品される産品に関し,国内法令に従い,特許を受けることができる発明,実用新案,意匠及び商標に仮保護を与える。
第12条 工業所有権の特別の部局,中央資料館の設置等
(1) 各同盟国は,工業所有権に関する特別の部局並びに特許,実用新案,意匠及び商標を公衆に知らせるための中央資料館を設置することを約束する。
最後に「実用新案」ですが、上記「意匠」と共に「登場」する割合が多いのですが、「実用新案」が単独で「登場」する条文は以下になります。
第4条 優先権
E(2) なお,いずれの同盟国においても,特許出願に基づく優先権を主張して実用新案登録出願をすることができるものとし,また,実用新案登録出願に基づく優先権を主張して特許出願をすることもできる。
I(2) 出願人が自己の選択により特許又は発明者証のいずれの出願をもすることができる同盟国においては,発明者証の出願人は,特許出願について適用されるこの条の規定に従い,特許出願,実用新案登録出願又は発明者証の出願に基づく優先権の利益を享受する。
第5条 不実施・不使用に対する措置,特許・登録の表示
A(5) (1)から(4)までの規定は,実用新案に準用する。
不実施に対する措置(5条A)については、実用新案法に準用されている点、注意が必要です。
一方で、特許独立の原則(4条の2)や発明者掲載権(4条の3)等は、実用新案には準用されていない点に、注意して解答する必要があります。
条文暗記は「辛い」かも知れませんが、上記観点等で整理していくと、暗記も少しは「楽しく」なるかも知れませんね。
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