実施ができない事例の拒絶理由は?

2021年10月20日 10:12

「実施ができない事例の拒絶理由は?」と問われたら、どのように答えますか?

実施ができない事例は、以下の3つのレベルで整理ができます。

 ①発明該当性(未完成発明)
 ②産業上の利用可能性
 ③記載不備


①は、理論的に正しくないレベルです。
②は、理論的には正しくても、実際的に実施ができないレベルです。
③は、理論的にも実際的にも、発明者本人は実施できますが、出願明細書の記載レベルに問題があり、第三者が実施できないレベルです。


①と②については、審査基準で説明がされていますので、その内容を確認しましょう。

審査基準:
第 29 条第 1 項柱書に規定されている特許要件は、以下の二つである。
(i) 「発明」であること(以下この章において「発明該当性」という。)
(ii) 「産業上利用することができる発明」であること(以下この章において「産業上の利用可能性」という。)


(i) 発明該当性については、審査基準で更に以下の説明がされています。

審査基準(続き):
2.1 「発明」に該当しないものの類型
(vi) 発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの

2.1.6 発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの
例:中性子吸収物質(例えば、ホウ素)を溶融点の比較的高い物質(例えば、タングステン)で包み、これを球状とし、その多数を火口底へ投入することによる火山の爆発防止方法
(説明)火山の爆発は、火口底においてウラン等が核分裂することに起因するという、誤った因果関係を前提としている。


また、(ii) 産業上の利用可能性についても、審査基準で以下の説明がされています。

審査基準(続き):
3.1.3 実際上、明らかに実施できない発明
理論的にはその発明を実施することが可能であっても、その実施が実際上考えられない発明は、「実際上、明らかに実施できない発明」に該当する。
例:オゾン層の減少に伴う紫外線の増加を防ぐために、地球表面全体を紫外線吸収プラスチックフイルムで覆う方法


「③記載不備」は、いわゆる実施可能要件と言われるもので、36条4項1号に規定されています。


第三十六条
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。


まとめると、拒絶理由としては、以下の通り整理ができます。

 ①発明該当性違反:29条柱書
 ②産業上の利用可能性違反:29条柱書
 ③実施可能要件違反:36条4項1号


弁理士試験対策としては、論文の事例問題としての出題の可能性は低いと思いますが、短答向けとしては、上記全てが拒絶される点に加え、拒絶理由が異なる点をおさえておくと良いでしょう!


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