小ネタ集@H26改正
H26改正の「小ネタ」をまとめました。特に、中上級者は「勢い」で改正前の規定で「書いてしまう」危険性があるので注意しましょう。
1.国内優先権の主張の手続き期間等(特実法)
「その旨および所定書面を『特許出願と同時』に特許庁長官に提出」→「その旨および所定書面を『経済産業省令で定める期間』に特許庁長官に提出」に変わります。
また、取下げ擬制(42条)の期間についても、「出願の日から『一年三月』を経過した時に取下げ擬制」→「出願の日から『経済産業省令で定める期間』を経過した時に取下げ擬制」に変わります。
その他、パリ優先についても同様な改正がされていますので、注意してください。
2.手続の補正(意匠法)
「60条の3」から「60条の24」に条文移動しています。根拠条文を挙げる場合には注意しましょう。
3.色違い類似商標(商標法70条)
H26改正法では、「前三項の規定は、色彩のみからなる登録商標については、適用しない。」とされ、いわゆる色違い類似商標の取り扱い(同条1項ないし3項)については、「色彩のみからなる登録商標」には不適用となります。
「色彩のみからなる登録商標の色を変えた場合の設問」が出た場合に、70条に飛びつかないように注意しましょう。
ちなみに、70条1項と2項は専用権、禁止権を「色違い類似商標」へ拡大する規定です。同条3項は不正使用取り消し審判(51条)の規定は「色違い類似商標」には拡大しないとする規定です。
昭和54年の論文本試で「商標法第70条」について論じさせる一行問題が出ています。「色違い商標は、類似する場合と類似しない場合で51条の規定適用がどうなるか?」といった有名な典型問題もありますので、この機会に復習しておきましょう。
4.著作隣接権と商標権の抵触
最後に短答で狙われそうな著作権との抵触についての改正です。商標権と著作隣接権との抵触が追加されています。
【現行法】 ・・・他人の著作権と抵触するときは、・・・
【法改正】 ・・・他人の著作権若しくは著作隣接権と抵触するときは、・・・
著作隣接権は著作権法89条、92条に規定されています。
第八十九条 実演家は、第九十条の二第一項及び第九十条の三第一項に規定する権利(以下「実演家人格権」という。)並びに第九十一条第一項、第九十二条第一項、第九十二条の二第一項、第九十五条の二第一項及び第九十五条の三第一項に規定する権利並びに第九十四条の二及び第九十五条の三第三項に規定する報酬並びに第九十五条第一項に規定する二次使用料を受ける権利を享有する。
6項 第一項から第四項までの権利(実演家人格権並びに第一項及び第二項の報酬及び二次使用料を受ける権利を除く。)は、著作隣接権という。
第九十二条 実演家は、その実演を放送し、又は有線放送する権利を専有する。
商標権と著作隣接権との抵触とは、どのようなケースなのでしょうか? たとえば、甲が作詞・作曲 → 当該作詞・作曲を乙(歌手)が実演 → 当該実演に依拠・類似した「音の標章」を丙が出願し登録 → 丙がテレビ放送で当該音の標章を広告に使用した。
[商標法2条3項9号] 音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為
このケースでは、丙による当該登録商標の使用(音の標章を発する行為)をする権利と、乙(実演家)の放送権(92条)とで抵触が生じます。
その他、H26改正法のポイントは、こちらのサイトをご覧ください。
https://www.mesemi.com/%E6%B3%95%E6%94%B9%E6%AD%A3/