意3条の2と国際公表

2017年03月05日 18:37

 まず、意匠法3条の2と趣旨(の一部)を共通にする特許法29条の2と国際公開との関係を確認しましょう。


第百八十四条の十三  第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案登録出願が国際特許出願又は実用新案法第四十八条の三第二項 の国際実用新案登録出願である場合における第二十九条の二の規定の適用については、同条中「他の特許出願又は実用新案登録出願であつて」とあるのは「他の特許出願又は実用新案登録出願(第百八十四条の四第三項又は実用新案法第四十八条の四第三項 の規定により取り下げられたものとみなされた第百八十四条の四第一項 の外国語特許出願又は同法第四十八条の四第一項 の外国語実用新案登録出願を除く。)であつて」と、「出願公開又は」とあるのは「出願公開、」と、「発行が」とあるのは「発行又は千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約第二十一条に規定する国際公開が」と、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面」とあるのは「第百八十四条の四第一項又は実用新案法第四十八条の四第一項 の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」とする。


 先願が国際公開された場合、取り下げ擬制とならない限り、その後に拒絶査定が確定したとしても、特29条の2の要件に該当することになります。


 それでは、意匠法ではどのようになるのでしょうか?


第六十条の六  日本国をジュネーブ改正協定第一条(xix)に規定する指定締約国とする国際出願であつて、その国際出願に係るジュネーブ改正協定第一条(vi)に規定する国際登録(以下「国際登録」という。)についてジュネーブ改正協定第十条(3)(a)の規定による公表(以下「国際公表」という。)がされたものは、経済産業省令で定めるところにより、ジュネーブ改正協定第十条(2)に規定する国際登録の日(以下「国際登録の日」という。)にされた意匠登録出願とみなす。


 国際公表されたものは、国際登録の日にされた意匠登録出願とみなされます(意60条の6)。


 ところが、特許法184条の13のような規定は意匠法には存在しません。


 したがって、先願が国際意匠登録出願であって、国際公表されたとしても、意3条の2がそのまま適用されることになります。



第三条の二  意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。


 つまり、先願に係る国際意匠登録出願であって、国際公表されたとしても、その後に拒絶が確定すれば、意3条の2の適用において後願を排除する引例にはなりません。


 特許法29条の2との違いは、どこから来るのでしょうか?


 それは趣旨(の一部)の相違です。


 意匠法3条の2には、特許法29条の2には無い「権利の錯綜防止」といった重要な趣旨があります。


 国際公表されたとしても、その後に拒絶が確定すれば「権利の錯綜」が生じることはなく、したがって、意3条の2の読み替え規定を設けるまでも無いとされたものと考えられます。 



 意匠法3条の2は、特許法29条の2と類似する規定ですが、両者は似て非なる条文です。


 今回の他の出願が国際公開(公表)された場合の相違や、創作者の要件の相違等、両条文の相違点についての理解を深めておくことをお勧めします。 


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