特許庁資料「先使用権」

2016年05月16日 20:04
 
 特許庁から「先使用権制度の円滑な活用に向けて ―戦略的なノウハウ管理のために― (第2版)」が公開されました。
 
 短答でも狙われそうな点をピックアップしましたので、以下に示します。
 
 まずは、「特許出願の際」の解釈です。
 
「ところで、特許出願から見た場合の「特許出願の際」とは、通常の特許出願では、その特許出願のときです。この特許出願のときについては、理論上は、特許出願の時刻ということになりますが、実務上において、特許出願の日のうちの「時刻」が、先使用権が認められるか否かの争点とされることは まれと思われます。 また、国内優先権主張を伴う出願、パリ優先権主張を伴う出願、PCT出願、分割出願等の場合は、その発明についての最先の特許出願のときです。」
 
 次に、「日本国内において」についての留意事項です。 
 
「特許法第 79 条にいう「日本国内において」は、発明地を限定するものではありませんので、日本国内で発明されたものでなくても、日本国内で、その発明の実施である事業又はその事業の準備を特許出願の際にしていた場合には、先使用権は認められます。」
 
 さらに、いわゆる先使用権の援用についても触れられています。 
 
「たとえ発注者自身が特許法第 79 条の要件を満たしていない場合でも、先使用権者の製造した製品を仕入れたのであれば、適法に販売をすることができます。」
 
 最後に、先使用権の必須判例である「ウォーキングビーム炉最高裁判決、昭和 61 年 10 月 3 日第二小法廷判決)において、定義や解釈が示されていますので、特に、以下の2点をおさえておきましょう。
 
「法七九条にいう発明の実施である『事業の準備』とは、特許出願に係る発明の内容を知らないでこれと同じ内容の発明をした者又はこの者から知得した者が、その発明につき、いまだ事業の実施の段階には至らないものの、 即時実施の意図を有しており、かつ、その即時実施の意図が客観的に認識される態様、程度において表明されていることを意味すると解するのが相当である。」
 
「特許法七九条所定のいわゆる先使用権者は、『その実施又は準備をして いる発明及び事業の目的の範囲内において』特許権につき通常実施権を有するものとされるが、ここにいう『実施又は準備をしている発明の範囲』とは、 特許発明の特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に日本国内にお いて実施又は準備をしていた実施形式に限定されるものではなく、その実施 形式に具現されている技術的思想すなわち発明の範囲をいうものであり、したがつて、先使用権の効力は、特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者 が現に実施又は準備をしていた実施形式だけでなく、これに具現された発明 と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも及ぶものと解するのが相当である。けだし、先使用権制度の趣旨が、主として特許権者と先使用権者との公平を図ることにあることに照らせば、特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式以外に変更する ことを一切認めないのは、先使用権者にとつて酷であつて、相当ではなく、 先使用権者が自己のものとして支配していた発明の範囲において先使用権を認めることが、同条の文理にもそうからである。」 
 
 前者の「事業の準備」の定義は全文、後者の「発明の範囲」については「けだし」以降の再現力を高めておくと良いでしょう。
 
 詳細は、特許庁公開資料に当たって確認してください。
 https://www.jpo.go.jp/seido/tokkyo/seido/senshiyou/index.html
 
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