組物の審査基準の改訂
年明けに行われた「組物についての審査基準の改訂ポイント」を確認しましょう。
まず、改訂「後」の審査基準の確認からです。
72.1.1.2 構成物品が適当であること
構成物品は、例えば組物の構成物品の例(第13部 別添参照)において示した例のように、社会通念上同時に使用される二以上の物品でなければならない。適当な構成物品によって構成されていない場合は、組物とは認められず、意匠法第8条の規定により拒絶の理由を通知する。
改訂前は、以下のように規定されていました。
72.1.1.2 構成物品が適当であること
構成物品は、組物の構成物品表(第13部 別添参照)において組物ごとに定められた ものとする。 すなわち、組物の構成物品は、組物の構成物品表の「備考」の欄に記載の場合を除き、「構成物品」の欄内に同時に使用される物品として並記されている各構成物品を少なくと も各一品ずつ含むものとする。 各構成物品以外の物品を含むものについては、その加えられた物品が各構成物品と同時に使用されるものであり、かつ各構成物品に付随する範囲内の物品であるものの場合に は、構成物品が適当なものと取り扱う。 なお、「備考」の欄において注意書が付されている組物については、その構成物品のすべてではなく、二種以上を最低限含む組み合わせによるものあるいはその組物の中の構成物 品欄ごとの組み合わせによるものも、構成物品が適当なものと取り扱う。 適当な構成物品によって構成されるものと認められない場合は、組物とは認められず、 意匠法第8条の規定により拒絶の理由を通知する。
改訂「前」は、構成物品「表」であったのが、改訂後は、構成物品の「例」となっている点が重要です。
また、改訂に当たっての議論ポイントは、以下になります(リンク先より抜粋。詳細はリンク先を参照)。
出典:https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/new_isyou_seido_wg13shiryou/04.pdf
(2)現行制度において生じている問題
「組物の構成物品表」は、組物の意匠の構成物品の適切性の判断において、審査運用の明確性と安定性に資するものとなっている。一方、現状では当該構成物品表の「構成物品」の欄内に掲げられる全物品を少なくとも各一品ずつ含むものでなければならないことから、多様化する意匠創作の実態に則していないとの指摘もある。
(3)対応の方向性(検討事項)
今後は「組物の構成物品表」については、適切な構成物品の例を示したものとし、意匠審査基準を以下のように改訂して、構成物品は、社会通念上同時に使用される物品と認められるものの範囲内で、出願人の任意にまかせることとしてはどうか。
改訂前は、構成物品表に無い構成物品が含まれる場合の取り扱いの「論点」があり、「同時に使用される物品か?」および「各構成物品に付随する範囲内の物品か?」の2要件を検討する必要がありましたが、改訂後は「社会通念上同時に使用される二以上の物品か?」の要件検討にシンプル化されました。
それでは、この「社会通念上同時に使用される二以上の物品」の要件はどこから来るのでしょうか?
それは、「条文(8条)の最初の要件」です。
第八条
同時に使用される二以上の物品であつて経済産業省令で定めるもの(以下「組物」という。)を構成する物品に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。
しかし、改訂「後」の審査基準は、従来通り「同時に使用される二以上の物品」の要件を「構成物品が適当であること」として説明がされています。
72.1.1 組物の意匠と認められる要件
意匠登録出願が、組物の意匠として意匠登録を受けるためには、以下のすべての要件を満たさなければならない。
(1)願書の「意匠に係る物品」の欄に記載されたものが経済産業省令で定めるものであること
(2)構成物品が適当であること
(3)組物全体として統一があること
今回の改訂で、上記(2)の要件も条文に沿って「社会通念上同時に使用される二以上の物品」とすれば良かったのに。。。と思うのは私だけでしょうか?
審査基準は条文の解釈を助ける役割を果たしますが「法律ではない」点に注意が必要です。
弁理士試験では「要件定立」と「当て嵌め」が重要ですが、審査基準の条文解釈を参考にしつつ、あくまでも条文に沿った要件定立と当て嵌めでの論述をお勧めします。