部分意匠の位置等は参酌?
特許庁審判部から「審判実務者研究会報告書2014」が出ました。
報告書では「審判実務上重要と思われる審判決事例について,専門家による研究を行い,その成果を広く公表することといたしました。」とあります。詳細はリンク先をご覧ください。
以下では、いわゆる「部分意匠の位置等の参酌」について、報告書で取り上げられているポイントを記載しておきます。
第16事例
平成24年(行ケ)第10449号 審決取消請求事件
知的財産高等裁判所平成25年6月27日判決言渡
3条2項(48条1項1号)に該当するとして無効審判を請求し、当該審決に対する取り消しが争われた事件についての研究です。
1.部分意匠における部分の位置等の参酌についての裁判所の判断
原告は,部分意匠における部分の位置等の参酌について,遊技機用表 示灯の表示カバーの一部(正面)である本件登録意匠部分の構成に遊技 機又は遊技機用表示灯の構成を加えるべきである旨の主張をしたが,裁 判所はこの主張を妥当ではないと判断した。 裁判所は,「部分意匠に係る部分及び物品の各用途若しくは機能並びに 部分意匠に係る物品における部分意匠に係る部分の位置,大きさ及び範 囲を参酌することを要するとしても,それらは部分意匠の創作性判断又 は類否判断において参酌すべきことをいうにすぎないのであり,これら を部分意匠の構成それ自体に含めることは,その使用の目的に応じて適 宜選択,変更するにすぎないとして意匠登録を受けないとしていた部分 意匠に係る部分を,実質的には部分意匠に取り込むことになり,部分意 匠登録出願の趣旨に反し,構成の特定方法としては相当でない。」(判決 第12頁7行~14行)と判示した。
報告書の研究では「部分意匠における破線部は,実線部の位置,範囲および大きさを認定するにあたり参酌されるものであり,審決においても充分参酌されたものと考える。」とあるように、「位置・大きさ・範囲」が「審決取り消し訴訟でも参酌」されている点への言及が強調されているように思えます。
判決文に従えば、部分意匠の構成の特定方法として、位置・大きさ・範囲を「参酌」することは必要であるが、位置等を部分意匠の「構成自体に含める」ことは、部分意匠制度の趣旨に反し、構成の特定方法としては相当ではないことになります。
この点については、意匠法審査基準とのズレがあるように感じるかもしれません。
解釈が難しい判決ですので、受験対策としては、審査基準の4つの基準での類否判断で十分でしょう。
情報ソース
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/kenkyukai/pdf/sinposei_kentoukai/h26_houkokusyo.pdf