間に合うか?PBP最高裁判決

2015年06月07日 20:18

 プロダクト・バイ・プロセス(PBP)特許のクレーム解釈に関する最高裁判決が出ました。大合議に対する差し戻し判決となります。

 最高裁判所の判決は、知財高裁のPBP特許のクレーム解釈に「ダメ出し」をした格好になり、実務にも大きく影響する判決内容です。

 重要判決と言えますので、論文本試まで残り1か月となりましたが、出題されるかも知れませんね。

<主文>
原判決を破棄する。本件を知的財産高等裁判所に差し戻す。 


<差し戻しの理由>
 本判決の示すところに従い,本件発明の技術的範囲を確定し,更に本件特許請求の範囲の記載が上記4(2)の事情が存在するものとして「発明が明確であること」という要件に適合し認められるものであるか否か等について審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。


 「大合議」の制度趣旨は、「最高裁の判断まで待たずして一定の信頼性のあるルール形成をしてほしいという強い要請」を受けて、「一定の信頼性のあるルール形成及び高裁レベルでの事実上の判断統一が要請され、その要請に応えるため」に設立された制度です(情報ソース参照)。

 私もそうですが、知財高裁も「差し戻しかよ」って思っているのではないでしょうか・・・(笑)


 さて、「知財高裁へ差し戻し」になったのですが、本最高裁判決で、PBPクレームの技術範囲の解釈が示されました。実務においても重要な判決ですが、受験勉強としてもしっかりポイントを理解し、判例の再現力を高めておきましょう。

<PBPクレーム発明の技術的範囲>
 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定されるものと解するのが相当である。 


<事情>
 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である。


 大合議判決では、「真正PBPクレーム」と「不真正PBPクレーム」に分け、前者は製造方法に限定されず、後者は限定して解釈すると判事されていましたが、最高裁判決の解釈指針によれば、後者の場合、記載要件(サポート要件・実施可能要件・明確性要件)の内の「明確性要件違反(36条6項2号)」に当たるとされたことになります。

 今後の弁理士試験で出題可能性の高い判決ですので、クレーム解釈に関連する他の判例(カリクレイン事件やリパーゼ判決など)を含めて、十分に勉強しておきましょう。

【最判平成27年06月05日】PBPクレーム
https://www.mesemi.com/products/%E3%80%90%E6%9C%80%E5%88%A4%E5%B9%B3%E6%88%9027%E5%B9%B406%E6%9C%8805%E6%97%A5%E3%80%91pbp%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%A0/

【最判平成11年07月16日】カリクレイン事件
https://www.mesemi.com/products/%E3%80%90%E6%9C%80%E5%88%A4%E5%B9%B3%E6%88%9011%E5%B9%B407%E6%9C%8816%E6%97%A5%E3%80%91%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6/

【最判平成03年03月08日】リパーゼ事件
https://www.mesemi.com/products/%E3%80%90%E6%9C%80%E5%88%A4%E5%B9%B3%E6%88%9003%E5%B9%B403%E6%9C%8808%E6%97%A5%E3%80%91%E3%83%AA%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BC%E4%BA%8B%E4%BB%B6/

情報ソース:
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/145/085145_hanrei.pdf
https://www.ip.courts.go.jp/vcms_lf/804.pdf