除斥期間・消滅効果の相違
特許権等を第三者が消滅させるための手段としては、特許法、実用新案法、意匠法では、無効審判が検討対象になりますが、商標法ではさらに取消審判も対象となります。
今回は、商標法特有の「権利の消滅」について、見ていきましょう。
まず、「除斥期間」です。
商標権を消滅させたい事案における取り得る措置問題として、無効審判と取消審判が対象となるケースで要注意なのが「除斥期間」です。
無効理由の46条(3条、4条等)、取消理由の5つの条文(50条、51条、52条の2、53条、53条2)に現れない重要条文が「除斥期間」です。
第四十七条 商標登録が第三条、第四条第一項第八号若しくは第十一号から第十四号まで若しくは第八条第一項、第二項若しくは第五項の規定に違反してされたとき、商標登録が第四条第一項第十号若しくは第十七号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が同項第十五号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)又は商標登録が第四十六条第一項第四号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。
第五十二条 前条第一項の審判は、商標権者の同項に規定する商標の使用の事実がなくなつた日から五年を経過した後は、請求することができない。
第五十二条の二 2 第五十一条第二項及び前条の規定は、前項の審判に準用する。
第五十三条 3 第五十二条の規定は、第一項の審判に準用する。
第五十三条の三 前条の審判は、商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。
除斥期間経過後は、無効審判、取消審判、共に請求できないため、採り得る措置として挙げると減点対象となるので注意が必要です。
さらに、レアケースですが、権利が消滅した後の事案で、損害賠償請求を回避するための措置としては、無効審判しか採り得ない点にも要注意です。
第四十六条 商標登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる。この場合において、商標登録に係る指定商品又は指定役務が二以上のものについては、指定商品又は指定役務ごとに請求することができる。
3 第一項の審判は、商標権の消滅後においても、請求することができる。
以上が、「採り得るか否か」の観点での注意が必要なポイントです。
次に、採り得る措置が複数存在する場合です。
ここで重要なのは「効果の相違」で、この点に言及した答案は得点アップに繋がります。
押さえておくべきポイントは、「権利の消滅時期」と「権利の消滅対象」です。
50条と51条の取消審判の両方が請求できる事案や、53条の2の取消審判と4条1項19号を理由とする無効審判を請求できる事案が代表例です。
それぞれの事案で、「権利の消滅時期」と「権利の消滅対象」が異なるため、この点についての理解を論文に記載できると「加点」対象となるでしょう。
第五十四条 商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、商標権は、その後消滅する。
2 前項の規定にかかわらず、第五十条第一項の審判により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、商標権は、同項の審判の請求の登録の日に消滅したものとみなす。
第四十六条の二 商標登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、商標権は、初めから存在しなかつたものとみなす。(ただし書以下省略)
「権利の消滅対象」については、条文からは読み取りが難しいと思いますので、青本の解説(制裁措置)に当たって、理解を深めておいてください。
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