需要者と一般需要者の違いは?

2015年05月16日 18:57

 H26年度の短答本試、第19問(第5枝)に「意匠の類否判断」の問題が出題されています。

5 登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断において「取引者」の観点を含めることはできない。

 意匠法24条2項の「需要者」に「取引者」が含まれるか否かが問われています。

第二十四条
2  登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。


 条文では「需要者」とあります。市場を「需要(者)」と「供給(者)」に分けるならば、「取引者」は供給者「側」に入るのではないでしょうか。短答本試ではこの点と24条2項に関連する判例の立法者の意図との相違が訊かれています。

 24条の2項の改正に関連する判例は以下です。「可撓」は「かとう」と読みます。

【最判昭和49年03月19日】可撓伸縮ホース事件
同条一項三号は、意匠権の効力が、登録意匠に類似する意匠すなわち登録意匠にかかる物品と同一又は類似の物品につき一般需要者に対して登録意匠と類似の美感を生ぜしめる意匠にも、及ぶものとされている(法二三条)ところから、右のような物品の意匠について一般需要者の立場からみた美感の類否を問題とするのに対し、三条二項は、物品の同一又は類似という制限をはずし、社会的に広く知られたモチーフを基準として、当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性を問題とするものであつて、両者は考え方の基礎を異にする規定であると解される。


 判例では「一般需要者」となっていますが、24条2項の立法者は「取引者」を含める規定として「需要者」としたとされています。

 短答を含め論文でも「取引者を事例とした設問」が出題される可能性がありますので、しっかり勉強しておきましょうね。

情報ソース
https://www.jpo.go.jp/torikumi/benrishi/benrishi2/pdf/h26benrisi_tan/question.pdf