H26「便乗?」改正
2014年10月07日 22:32
商標の保護対象の拡充という大きな改正に隠れて、条文の不備を"こっそり"と解消する"便乗"改正の一つ目です。
平成26年改正 商標法 4条1項18号
【現行法】 商品又は商品の包装の形状であつて、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標
【改正法】 商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。第二十六条第一項第五号において同じ。)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標
旧18号では「役務」を含まない規定でしたが、「役務」を含む規定に変わります。大きな論点の一つが無くなったことになりますが、3条1項→3条2項→4条1項18号の典型パターンは、これからも出題の可能性がありますので、十分勉強しておきましょう。
「機能を確保するために不可欠な立体的形状」から「当然に備える特徴」に変わった点も要注意です。規定上は、「形状」以外の「特徴」も含まれることになります。「色彩」や「音」、将来的な「におい」を想定した規定でしょうか。短答の問題として、「機能」を「形状」に変えた出題も想定されます。
同趣旨の意匠法5条3号の規定の改正はなく、「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」は登録を受けることができません。口述の対策としては、「形状に着目した場合に不可欠な形状のみからなる意匠」と解釈すべき点を再確認しておきましょう。
「便乗改正」のもうひとつは、不備解消というよりは、確認的に規定される26条6号です。
平成26年改正 商標法 26条6号
【現行法】 なし
【改正法】 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
いわゆる構成態様の規定である3条6号「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」に対応する、いわゆる使用態様に関する規定が新設されました。
判例ではおなじみですが、商標的使用態様でない場合は商標権侵害を構成しないことを明文化した規定です。
商標法の中で難解な条文の一つと言われている26条ですが、総括条項として本号が追加されたことから、論文の勉強法としては、「構成態様と使用態様の相違」に関する一行問題が出題される可能性がありますので、十分勉強しておくことが重要であると言えます。
論文の事例問題でも頻出の効力の制限規定(26条)ですので、日ごろの答練での記載練習を怠らないようにしておきましょう。
情報ソース
https://www.meti.go.jp/press/2013/03/20140311001/20140311001-6.pdf
https://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/pdf/h26_houkaisei/h26text.pdf