パリ優との対比における国優の効果(前半)

2021年09月22日 12:26

国内優先権の効果は、パリ優先権の効果と同等の効果を生じさせています。この点は青本にも説明がされています。

青本:
二項は特許出願等に基づく優先権の主張の効果を規定したもので、基本的にパリ条約による優先権の主張の効果(パリ条約四条B)と同等の効果を生じさせることとした。


ここで、パリ優先権の効果を確認しておきましょう。

パリ条約 第4条 優先権
B.すなわち,A(1)に規定する期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は,その間に行われた行為,例えば,他の出願,当該発明の公表又は実施,当該意匠に係る物品の販売,当該商標の使用等によつて不利な取扱いを受けないものとし,また,これらの行為は,第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない。

前半の効果「不利な取り扱いを受けない」と、後半の効果「いかなる権利又は使用の権能をも生じさせない」の2つの効果があり、前半は特許要件に関する効果と理解できます。

それでは、国内優先権制度の効果(特41条2項)を確認していきましょう。


第四十一条
2 前項の規定による優先権の主張を伴う特許出願に係る発明のうち、当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(当該先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、外国語書面)に記載された発明(当該先の出願が同項若しくは実用新案法第八条第一項の規定による優先権の主張又は第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)若しくは第四十三条の三第一項若しくは第二項(これらの規定を同法第十一条第一項において準用する場合を含む。)の規定による優先権の主張を伴う出願である場合には、当該先の出願についての優先権の主張の基礎とされた出願に係る出願の際の書類(明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面に相当するものに限る。)に記載された発明を除く。)についての第二十九条、第二十九条の二本文、第三十条第一項及び第二項、第三十九条第一項から第四項まで、第六十九条第二項第二号、第七十二条、第七十九条、第八十一条、第八十二条第一項、第百四条(第六十五条第六項(第百八十四条の十第二項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)並びに第百二十六条第七項(第十七条の二第六項、第百二十条の五第九項及び第百三十四条の二第九項において準用する場合を含む。)、同法第七条第三項及び第十七条、意匠法第二十六条、第三十一条第二項及び第三十二条第二項並びに商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第二十九条並びに第三十三条の二第一項及び第三十三条の三第一項(これらの規定を同法第六十八条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、当該特許出願は、当該先の出願の時にされたものとみなす。


長いですね。。。

パリ優先権の2つの効果の内、前半の特許要件に関する規定については、審査基準で整理がされていますので、こちらで確認しましょう。


審査基準:2.4 国内優先権の主張の効果
国内優先権の主張を伴う後の出願に係る発明のうち、その国内優先権の主張の基礎とされた先の出願の当初明細書等に記載されている発明については、以下の(i)から(vi)までの実体審査に係る規定の適用に当たり、当該後の出願が当該先の出願の時にされたものとみなされる(第 41 条第 2 項)。
(i) 新規性(第 29 条第 1 項)
(ii) 進歩性(第 29 条第 2 項) 
(iii) 拡大先願(第 29 条の 2 本文) 
(iv) 発明の新規性喪失の例外(第 30 条第 1 項及び第 2 項) 
(v) 先願(第 39 条第 1 項から第 4 項まで) 
(vi) 上記(i)から(v)までについての独立特許要件(第 17 条の 2 第 6 項において準用する第 126 条第 7 項) 


まず、代表的な29条、29条の2、39条の特許要件が列挙されていることがわかります。注意が必要なのは、新規性喪失の例外規定(30条)といわゆる独立特許要件(準特126条7項)です。


第三十条 特許を受ける権利を有する者の意に反して第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明は、その該当するに至つた日から一年以内にその者がした特許出願に係る発明についての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項各号のいずれかに該当するに至らなかつたものとみなす。
2 特許を受ける権利を有する者の行為に起因して第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項各号のいずれかに該当するに至つたものを除く。)も、その該当するに至つた日から一年以内にその者がした特許出願に係る発明についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。


第百二十六条 特許権者は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすることについて訂正審判を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
7 第一項ただし書第一号又は第二号に掲げる事項を目的とする訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。


これら2つの規定についても「特許出願」は、国内優先権の効果「当該特許出願は、当該先の出願の時にされたものとみなす。」とあるように、先の出願日を基準として判断されることになります。


弁理士試験対策としては、パリ優先権の前半の効果を生じさせるための条文列挙問題が出た場合を想定し、新喪例と独立特許要件を忘れずに記載できるよう準備しておくことをお勧めします!


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