パリ優との対比における国優の効果(後半)

2021年09月26日 03:01


前回に続き、パリ優先権の効果との対比における国内優先権の効果を確認することにしましょう。
今回は、パリ優先権の「後半」の効果(第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない)についてです。


パリ条約 第4条 優先権
B.すなわち,A(1)に規定する期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は,その間に行われた行為,例えば,他の出願,当該発明の公表又は実施,当該意匠に係る物品の販売,当該商標の使用等によつて不利な取扱いを受けないものとし,また,これらの行為は,第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない。


青本には、パリ優先の「前半」および「後半」に該当する国内法の条文が説明されており、一方、審査基準には、パリ優先の「前半」の効果に該当する国内法の条文が説明されています。

そこで、「青本の記載」と「審査基準の記載」の差分を取って、パリ優先の「後半の効果に該当する国内法の条文」を抽出してみます。


青本(注:パリ優先の「後半の効果」に該当する条文のみ抽出):
具体的には優先権の主張を伴う特許出願に係る発明のうち先の出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明については、
⑸六九条二項二号(特許権の効力の及ばない範囲)
⑹七二条(他人の特許発明、登録実用新案、登録意匠等との利用又は他人の意匠権、商標権との抵触の関係、実一七条、意二六条及び商二九条も同趣旨である)
⑺七九条(先使用による通常実施権)
⑻八一条及び八二条一項(意匠権の存続期間満了後の通常実施権。意三一条二項及び三二条二項、商三三条の二第一項及び三三条の三第一項も同趣旨である)
⑼一〇四条(生産方法の推定)
の規定の適用においては、先の出願の日又は時に出願されたものとみなすこととした。


まず、第三者に実施権を生じさせないようにする規定として、利用抵触(72条)、先使用権(79条)、意匠権の存続期間満了後の通常実施権(81条、82条)が規定されているのがわかります。


次に、特許権の効力の制限に関し、69条2項2号が規定されています。当該「物」に限られますが、特許権の効力が及ばなく"ならないよう"規定されています。

第六十九条
2 特許権の効力は、次に掲げる物には、及ばない。
二 特許出願の時から日本国内にある物


最後に生産方法の推定(104条)です。

第百四条 物を生産する方法の発明について特許がされている場合において、その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でないときは、その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定する。


この規定(生産方法の推定@104条)が挙げられている理由が判りにくいのですが、優先期間中に公然知られた物であっても、先の出願前には公然知られていない場合には、生産方法の推定規定が適用され、「製造方法特許で物への権利行使」が可能となります。逆に優先権の効果が生じなければ、カテゴリ相違(製造方法特許と物)のため、権利行使ができないことになります。


弁理士試験対策としては、パリ優先権の「後半」の効果を生じさせるための条文列挙問題が出た場合を想定し、特に104条の規定も漏らさずに記載できるよう準備しておくことが重要です!

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