先使用権者の実施行為の変更

2016年05月19日 19:31
 
 特許庁から「先使用権制度の円滑な活用に向けて ―戦略的なノウハウ管理のために― (第2版)」が公開されました。
 
 Q&A形式で「先使用権の論点」に関する解説(特許庁の考え方)が示されています。
 
 問9は「実施行為の変更」に関してです。
 
「問9 先使用権者は、特許法第 2 条第 3 項に定義された実施行為を変更することはできるのでしょうか。具体的には、例えば、仕入販売のみを行っていた先使用権者が、特許出願後に、先使用権に基づいて生産行為を行うことができるのでしょうか。」
 
 この点に関して、以下の様に解説されています。
 
「特許法第 79 条が、「その発明の実施である事業をしている者・・・は、その実施・・・をしている発明及び事業の目的の範囲内におい て、・・・通常実施権を有する」と規定していることから、その発明の実施である事業の目的の範囲内においてのみ通常実施権を取得するといえます。 したがって、原則として、先使用に係る製品の仕入販売を行っていた者は、 その発明の実施行為である販売(譲渡)に限り先使用権を取得するといえますから、その者に、先使用に係る製品を製造する先使用権は認められません。」
 
 原則は上記の通りですが、例外として、以下の解説がされています。
 
「しかし、例えば、先使用権に係る製品を国内で製造していた者が、他者による特許出願後に、海外の製造業者に、製品の具体的な形状・ 仕様等を定めて発注し、その全量を納入させる形態の下請製造を行わせた場合には、他者の特許出願の前後のいずれについても国内で製造・販売をしていたと評価される場合があり得ます(。)」
 
 これは、いわゆる「一機関」に関連するケースになります。
 
 特許出願時に「製造」していた先使用権者は、市場流通のその後の行為である「販売」までできるといった考え方もありますが、特許庁は、あくまでも条文は「その発明の実施である事業をしている者・・・は、その実施・・・をしている発明及び事業の目的の範囲内におい て、・・・通常実施権を有する」とあることから、実施行為の変更は認めないとの考え方と採っているようです。
 
 詳細は、特許庁公開資料に当たって確認してください。
 https://www.jpo.go.jp/seido/tokkyo/seido/senshiyou/index.html
 
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