商標登録を受ける権利?

2021年09月02日 09:30

「特許を受ける権利」に相当する商標法上の権利はあるのでしょうか?

まず、特許を受ける権利についての拒絶・無効理由を確認しましょう。


特許法 第四十九条
審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
七 その特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないとき。

特許法 第百二十三条
特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。
六 その特許がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとき(・・・省略・・・)。


特許を受ける権利を有しない者の出願は拒絶され(特49条7号)、無効理由を有します(特123条6号)。

商標法では「商標登録出願により生じた権利」について規定されており、拒絶理由の対象とはならず、無効理由の対象となっています。


商標法 第四十六条
商標登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる。
四 その商標登録がその商標登録出願により生じた権利を承継しない者の商標登録出願に対してされたとき。


青本では、「商標登録出願により生じた権利」と「特許を受ける権利」の関係について、以下のように説明がされています。


青本 商標法13条 特許法の準用
二項は商標登録出願により生じた権利について特許法でいう特許を受ける権利の規定を準用している。旧法では特許を受ける権利は一種の財産権と考えられ自由に移転できるのに対して、商標登録出願により生じた権利は「其ノ營業ト共ニスル場合ニ限リ」移転することができるとされていたため、権利の性質にかなり大きな相違があると考えられていたので、特許法の条文を準用できなかったのである。現行法では、その「營業ト共ニスル場合ニ限リ」という要件を削除したので、法律的性格としては、商標登録出願により生じた権利は特許出願をした後の特許を受ける権利と同じになった結果として本項の準用となったのである。

「商標登録出願により生じた権利は特許出願をした後の特許を受ける権利と同じ」という点は覚えておくと良いでしょう。

なお、
商標登録出願前の権利についての規定がないのは、商標法の保護対象が「創作」ではないことが理由になります。

令和元年の意匠法の論文本試で、特許法と商標法の保護対象の相違(創作か否か)の観点から登録要件の異同(条文列挙)が問われましたが、特許を受ける権利と商標登録出願により生じた権利に関する拒絶理由の相違について触れることができたのではないかと思います。


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