意匠法改正の方向性

2018年11月04日 17:40

 現在、意匠法改正の議論がされています。

 6つの観点について「意匠制度の見直し」の方向性が示されました。

 (1)画像デザインの保護について
 (2)空間デザインの保護について
 (3)関連意匠制度の拡充について
 (4)意匠権の存続期間の延長について
 (5)複数意匠一括出願の導入について
 (6)物品区分表の見直しについて

 詳細はこちら「意匠制度の見直しの方向性(案)」を参照ください。
 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/isyounew09/03.pdf


 以下が、見直しの方向性になります(上記資料からポイントを抜粋)。

(1)画像デザインの保護について
①操作画像や表示画像など、画像が関連する機器等の機能に関係する画像については、画像が物品(又はこれと一体として用いられる物品)に記録・表示されるかどうかにかかわらず保護対象とすることで、物品に記録されていない画像や、物品以外の場所に投影される画像を保護すべきではないか。

 「物品に記録されていない画像や、物品以外の場所に投影される画像」の保護が拡充される方向ですが、「操作画像や表示画像など、画像が関連する機器等の機能に関係する画像について」との要件がある点に注意が必要です。 


②画像に係る意匠については、特許法のプログラム等の発明の例を参考に、その作成やネットワークを通じた提供等を実施行為に含める一方、サーバの管理行為等については含めない方向で整理してはどうか。

 侵害を構成する実施行為として、画像意匠を含むアプリケーションの「作成」や「ネットワークを通じた提供等」が、行為累計に加わりそうです。


(2)空間デザインの保護について
③現行意匠法の保護対象である「物品」(動産)に加え、「建築物」(不動産)を意匠の保護対象としてはどうか。

 現在は、例えば「流通時点での組み立てバンガロー」が保護対象となっていますが、いよいよ、不動産(建築物)も意匠法上の保護対象となるのでしょうか。

④内装についても、以下のような方向性で、保護の拡充を図ることとしてはどうか。 組物意匠と同様、一意匠一出願の原則の例外として、家具や什器等の複数の物品等の組合せや配置、壁や床等の装飾等により構成される内装が、「内装全体として統一的な美感を起こさせる」という要件を満たす場合に限り、一意匠として意匠登録を認める。

 内装の保護について、「組物の意匠の考え方」を持ち込む点は、面白いですね。今年の論文試験で「一意匠一出願の例外」を問う出題があり、組物(8条)を挙げた受験生も多いと思いますが、改正後は「内装」についても列挙が必要になりそうです。


(3)関連意匠制度の拡充について
⑤関連意匠の出願可能期間は、企業のニーズ等も踏まえつつ、本意匠の出願から10年以内としてはどうか。ただし、本意匠の意匠権が存続している場合に限り、関連意匠の出願を認めることとし、本意匠の出願から10年経過前であっても、本意匠が既に消滅している場合には、第三者の予見可能性の観点から、関連意匠の出願を認めないこととしてはどうか。

⑥本意匠に類似する意匠(関連意匠A)と同様、関連意匠にのみ類似する意匠(関連意匠B)についても、本意匠の出願から10年以内であれば、出願を認めることとしてはどうか。 関連意匠Bについても、一度パブリックドメインとなった関連意匠Aが復活することを避けるため、関連意匠Aが存続している場合に限り、出願を認めることとしてはどうか。 一方、本意匠の存続を関連意匠Bの出願の要件とすると、本意匠を既に使用していない場合でも、本意匠を維持しなければならなくなり、ユーザーの無用な費用負担を回避する観点から、本意匠の存続は関連意匠Bの出願の要件とすべきでないのではないか。


 「主体」「客体」「時期」「手続き」の各要件の内、「時期」と「客体」要件の緩和となります。時期的要件については、関連意匠も「関連意匠にのみ類似する意匠(関連意匠B)」も、本意匠の出願日から10年以内となっています。「客体要件」については、関連意匠の場合は本意匠の意匠権が存続している場合、「関連意匠にのみ類似する意匠(関連意匠B)」の場合は「本意匠に類似する意匠(関連意匠A)」が存続している場合に限られるとされています。

(4)意匠権の存続期間の延長について
⑦意匠権の存続期間を、「登録日から20年」から「出願日から25年」に見直してはどうか。

 他法(特許、実用新案)の権利の存続期間の起算点が「出願日」であり、創作法(特実意)で共通化される方向ですので、特に問題はないでしょう。


(5)複数意匠一括出願の導入について
⑧複数の意匠についての意匠登録出願を一の願書で行うことができるようにするとともに、実体審査や意匠登録は現行制度と同じく意匠ごとに行うこととしてはどうか。

 1つの出願に複数の意匠を含めることができ、一方で、審査は各意匠ごとに行われるようで、ハーグ協定ジュネーブ改正協定とも整合が取れています。

第六十条の六
2 二以上の意匠を包含する国際出願についての前項の規定の適用については、同項中「された意匠登録出願」とあるのは、「国際登録の対象である意匠ごとにされた意匠登録出願」とする。
 
 
(6)物品区分表の見直しについて
⑨以下の方向性で対応してはどうか。物品自体が明確である場合には、物品区分表の区分と同程度の区分を記載していないことを拒絶理由の対象としない。

 短答で狙われそうですね。「物品自体が明確である場合には」との要件に注意が必要です。


 まだ最終決定ではありませんが、実現すれば、久しぶりの「大型改正」になりそうです。

 改正マターは短答、論文、口述の全てで問われる可能性が高い観点になりますので、今の内から関連条文に当たり、まずは現行意匠法の理解を充分に深めておくことをお勧めします。

弁理士 論文ゼミ(目白ゼミ)