特許出願の分割

2021年08月21日 05:58

特許出願の分割(特44条)は、青本にも「分割もある意味では補正であり、補正と同様の効果を持ち得る」と説明がされている通り、「補正の一種」と言われていて、実務でも大変重要な制度になります。

以下、補正と分割(特許出願の分割)の異同を整理して行くことにしましょう。

まず、両者の効果(遡及効)が共通します(特44条2項)。そして、時期の共通性があることが分かります(特44条1項1号)。

第四十四条 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。
(2号、3号省略)

2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。(但し書以下省略)


分割は、「別出願での権利化」を目指すことになるため、コスト的なデメリットはありますが、拒絶理由通知や査定等への対処の場面で、補正よりも柔軟な対応が可能です。

時期については、査定後の分割が登録査定と拒絶査定の両方で認められています(特44条1項2号、3号)。

第四十四条 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
二 特許をすべき旨の査定(・・・省略・・・)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。
三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。


また、補正における「技術的特徴を変更する補正(特17条2第4項)」や「目的外補正(17条の2第5項6項)」に相当する制限規定がなく、新規事項の追加に違反しない範囲で柔軟な分割(特許請求の範囲の補正)が可能です。

新規事項の追加が「NG」なのは両者に共通しますが、その帰趨が異なる点には注意が必要です。

補正の場合は拒絶理由となりますが(特49条1項1号)、分割の場合は遡及効(特44条2項)が得られない扱いとなり、その結果、出願の分割の時期に応じて、29条への該非が問題となります。

第四十九条 審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項又は第四項に規定する要件を満たしていないとき。


審査基準「2.3 特許出願の分割の効果」:
分割要件が満たされている場合は、分割出願は、原出願の時にしたものとみなされる。他方、分割要件のうち実体的要件が満たされていない場合は、分割出願は、原出願の時にしたものとはみなされずに、現実の出願時にしたものとして取り扱われる。


弁理士試験(論文)対策としては、「補正との対比により特許出願の分割制度について説明せよ」といった設問へは、上記観点を中心に両者の異同について説明すると良いでしょう!

おまけ:
「分割は補正よりコストがかかる」のは事実ですが、弁理士試験(論文)では「コストの観点」は書くことはありませんので、ご注意ください。


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