産業上の利用可能性

2021年08月09日 17:14

産業上の利用可能性が実務で問題となることは少ないと思いますが、国際特許出願(PCT)を含めて、重要な特許要件の一つ(29条1項柱書)ですので、理解を深めておきましょう。


「産業上の利用可能性」の法上の定義はありませんが、青本には、以下の説明がされています。

<青本29条>
ここにいう産業上利用することができる発明とは、学術的、実験的にのみ利用することができるような発明などは排除することを意味する。


「・・・ような発明など」とあり、他の事例が気になるところですが、審査基準の方で、青本記載の内容を含めて類型整理がされています。

<審査基準3.1>
以下の(i)から(iii)までのいずれかに該当する発明は、産業上の利用可能性の要件を満たさない。
(i) 人間を手術、治療又は診断する方法の発明
(ii) 業として利用できない発明
 (ii-i) 個人的にのみ利用される発明(例:喫煙方法)
 (ii-ii) 学術的、実験的にのみ利用される発明
(iii) 実際上、明らかに実施できない発明

「(i) 人間を手術、治療又は診断する方法の発明」は、国内法特有の基準になりますので、短答から口述まで狙われる可能性がある重要ポイントです。
「(ii) 業として利用できない発明」については、具体例としては、「個人的にのみ利用される発明としての喫煙方法」を覚えておくと良いでしょう。「(iii) 実際上、明らかに実施できない発明」について審査基準では更に以下の説明がされていますので、具体事例を含めておさえておきましょう。

<審査基準3.1.3>
理論的にはその発明を実施することが可能であっても、その実施が実際上考えられない発明は、「実際上、明らかに実施できない発明」に該当する。
例:オゾン層の減少に伴う紫外線の増加を防ぐために、地球表面全体を紫外線吸収プラスチックフイルムで覆う方法


論文対策としては、仮に「事例問題に対して産業上の利用可能性について述べよ」といった問題が出た場合には、焦らずに(難しく考えずに)、条文29条を挙げ、上記「3つ」の類型を説明した後、それらの当て嵌めを行い、結論に導くことで対応しましょう!

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