禁止権の侵害は間接侵害?

2016年11月06日 20:33

 意匠法と商標法では、「類似」という概念を導入し、権利範囲を拡大しています。


 それぞれの、権利の効力規定を見てみましょう。


(意匠権の効力)

第二十三条  意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。(ただし書以下省略)


(商標権の効力)

第二十五条  商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。(ただし書以下省略)



 「あれ?」と思われた方も居るのではないでしょうか。


 商標法では、「類似」範囲への権利拡大(いわゆる禁止権への拡大)は、商標権の効力(商25条)ではなく、侵害とみなす行為(商37条)で規定されています。


(侵害とみなす行為)

第三十七条  次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。

一  指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用


 両者の規定振りの相違は、どこから来るのでしょうか?


 ・・・


 答えは、「類似」範囲の実施権(使用権)の有無にあります。


 類似範囲において、意匠権者には実施権がありますが、商標権者には使用権はありません(排他権のみです)。  


 間接侵害行為を「侵害の蓋然性が高い予備的・幇助的行為」とするならば、禁止権の侵害を間接侵害(37条1号)で規定するのには、少々違和感を感じます。


 類似範囲の権利侵害について、条文上は、意匠法では直接侵害(意23条)となり、商標法では間接侵害(商37条1号)となる点、注意して解答することが必要です。


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