関連意匠制度の改正か?(その3)

2018年08月26日 18:07

 特許庁から「意匠制度の見直しの検討課題に対する提案募集について」が公開されました。
 https://www.jpo.go.jp/iken/180807_isho_seido.htm


 上記リンク先によれば「関連意匠制度の拡充」について、3つの論点が指摘されています。
①関連意匠の出願が認められるのは、本意匠の公報発行日前までとされている。本意匠の公報発行日後において関連意匠の出願を認めることについてどう考えるか。
②関連意匠にのみ類似する関連意匠の登録を認めることについてどう考えるか。
③関連意匠の存続期間をどのように設定すべきか(本意匠の存続期間に合わせるべきか)。


 今回は上記③を取り上げて、「関連意匠の現状と課題」更には「防護標章の不随性」について理解を深めましょう。

 まずは、条文と青本の確認からです。


(存続期間)
第二十一条 意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、設定の登録の日から二十年をもつて終了する。
2 関連意匠の意匠権の存続期間は、その本意匠の意匠権の設定の登録の日から二十年をもつて終了する。


<青本(20版)>

 二項は、平成一〇年の一部改正において新設された規定であり、関連意匠の意匠権の存続期間について規定したものである。本意匠とその関連意匠の意匠権については権利の重複部分が生じることとなることから、関連意匠の意匠権は、関連意匠の意匠権の設定の登録が本意匠の意匠権に遅れた場合でも、権利の重複部分に関して権利の実質的な延長が生じないようにするために、関連意匠の存続期間は本意匠の設定登録の日から起算する旨を規定している。

 ただし、本意匠の意匠権が、存続期間の満了以外の理由、すなわち、①意匠権の放棄、②登録料の不納付、③無効審決の確定を理由として消滅した場合については、本意匠と関連意匠の整理が便宜的なものであり、各々の意匠が同等の創作的価値を有することを踏まえ、関連意匠同士の関連性は維持しつつ、関連意匠の意匠権は存続するものとする。


 本意匠の「周囲」を関連意匠で「保護」する構成は、著名商標の「周囲」を防護標章で「保護」する構成と似ています。

 以下、「関連意匠に係る権利の一体性」と「防護標章登録に基づく権利の不随性」の相違について確認しましょう。

 意匠法の「移転」についての制限は、意22条で規定されています。


(関連意匠の意匠権の移転)
第二十二条 本意匠及びその関連意匠の意匠権は、分離して移転することができない。
2 本意匠の意匠権が第四十四条第四項の規定により消滅したとき、無効にすべき旨の審決が確定したとき、又は放棄されたときは、当該本意匠に係る関連意匠の意匠権は、分離して移転することができない。


 一方、防護標章の「不随性」については、商66条で規定されています。


(防護標章登録に基づく権利の附随性)
第六十六条 防護標章登録に基づく権利は、当該商標権を分割したときは、消滅する。
2 防護標章登録に基づく権利は、当該商標権を移転したときは、その商標権に従つて移転する。
3 防護標章登録に基づく権利は、当該商標権が消滅したときは、消滅する。
4項~6項省略


 このように、意匠法と商標法の規定ぶりは異なりますが、実質的な一体性/不随性に関する規定はほぼ同じで、「消滅」のみが異なることが分かります。意匠法では、本意匠が消滅したからと言って、それを理由に関連意匠が消滅することはない点が異なります。

 青本に説明されている「各々の意匠が同等の創作的価値を有することを踏まえ、関連意匠同士の関連性は維持しつつ、関連意匠の意匠権は存続するものとする」との趣旨からの相違と理解できます。

 改正議論のポイントは「権利の重複部分に関して権利の実質的な延長」と「各々の意匠が同等の創作的価値を有する」点の調整にあると思います。この点に関しては、一つの方向性として、「関連意匠の意匠権についての制限規定、すなわち、本意匠の意匠権と重複する部分については効力が及ばない旨の規定を設ける」ことで対応可能かと思いますが、皆様はどう考えますか?


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