H30論文本試・意匠法・問題2(その2)

2018年07月16日 18:36

 2つ目の問いは「独占実施の確保」に関する問題です。

 答案構成では、「意匠権の譲渡」や「専用実施権の設定」を挙げる必要がありそうですが、「通常実施権の許諾」はどうでしょうか? 本問で注意が必要なのは、他人の権利は「部品」に係るものであり、独占実施を望むのは「完成品」であることです。

 それでは、問題文を確認しましょう。

「今後製造販売する意匠イを利用した「椅子」と「テーブル」(これらの脚以外の具体的形状はま だ決まっていない)の意匠について製造販売等を独占したい」

 すなわち、「他人の意匠権に係る意匠イ(部品)を利用した椅子やテーブル(完成品)の製造販売等の独占」を実現するための施策が、クライアントからの要求となります。


 本問において深い理解が必要なのは、「排他権と実施権」の関係です。

 仮に、部品である意匠イに関し、意匠権あるいは専用実施権を得たとした場合、それを利用する完成品の独占実施は、確保できるのでしょうか? 部品に係る意匠権は、当該部品の意匠を利用する他人の完成品の実施を排除できるのみで、完成品に係る自己の実施の確保を保証するものではありません。

 そうすると、将来の完成品に係る出願および登録を目指すことが必要となり、当該完成品の独占実施に向けた「現時点での準備」としては、利用する他人の部品に係る意匠権の「実施権の確保」ということになりそうです。

 本問は、その点の理解を問う問題かと思われます。

 本年度の意匠法は、よく練られた「良問」と言えるのではないでしょうか。皆様も、本問に当たって答案構成を行いつつ、「排他権と実施権の関係の理解」を深めてください。

弁理士 論文ゼミ(目白ゼミ)