実用新案登録の無効についての審決の取消訴訟においては、審判の手続において審理判断されていなかつた刊行物記載の考案との対比における無効原因の存否を認定して審決の適法、違法を判断することの許されないことは、当裁判所の判例の趣旨とするところであるが(最高裁昭和四二年(行ツ)第二八号同五一年三月一〇日大法廷判決・民集三〇巻二号七九頁参照)、審判の手続において審理判断されていた刊行物記載の考案との対比における無効原因の存否を認定して審決の適法、違法を判断するにあたり、審判の手続にはあらわれていなかつた資料に基づき右考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)の実用新案登録出願当時における技術常識を認定し、これによつて同考案のもつ意義を明らかにしたうえ無効原因の存否を認定したとしても、このことから審判の手続において審理判断されていなかつた刊行物記載の考案との対比における無効原因の存否を認定して審決の適法、違法を判断したものということはできない。