【知財高裁平成17年10月31日】カラビナ事件

 判決文(全文)はこちらからダウンロードしてください。

 「意匠に係る物品」の記載について,別表一の備考1では,「この表の下欄に掲げる物品の区分に属する物品について意匠登録出願をするときは,その物品の属する物品の区分を願書の『意匠に係る物品』の欄に記載しなければならない。」とし,備考2で,「この表の下欄に掲げる物品の区分のいずれにも属さない物品について意匠登録出願をするときは,その下欄に掲げる物品の区分と同程度の区分による物品の区分を願書の『意匠に係る物品』の欄に記載しなければならない。」としており,また,意匠法施行規則2条1項によれば,願書の記載は様式第二により記載されなければならないと規定されているところ,様式第二の備考39において,「別表第一の下欄に掲げる物品の区分のいずれにも属さない物品について意匠登録出願をするときは,『【意匠に係る物品の説明】』の欄にその物品の使用の目的,使用の状態等物品の理解を助けることができるような説明を記載する。」と規定している。

 そうすると,登録意匠における物品の範囲は,「意匠に係る物品」の欄に記載された物品の区分によって確定されるべきものであり,「意匠に係る物品の説明」の欄の記載は,「意匠に係る物品」の欄に記載された物品の理解を助けるためのものであるから,物品に関する願書の記載は,願書の「意匠に係る物品」に記載された物品の区分によって確定されるのが原則であり,「意匠に係る物品の説明」の記載によって物品の区分が左右されるものではない。

 本件についてみると,本件登録意匠の願書の「意匠に係る物品」欄には「カラビナ」との記載があり,「意匠に係る物品の説明」欄には「本願意匠に係る物品は,登山用具や一般金具として使用される他,キーホルダーやチェーンの部品等の,装飾用としても使用されるものである。」との記載があることは,上記(1)のとおりである。

 「カラビナ」は,別表一の物品の区分の中に含まれていないから,備考2の「この表の下欄に掲げる物品の区分のいずれかにも属さない物品」に該当するところ,上記(1)のとおり,「カラビナ」は,登山用具の一つとして一般名称化しているから,願書の「意匠に係る物品」欄に「カラビナ」と記載している本件出願においては,第26類の「運動競技用品」の「その他の運動競技用品」中の「ピッケル」,「ハーケン」といった物品の区分と同程度の区分による物品の区分として明確に把握することができるというべきである。

 ところで,上記のとおり,「意匠に係る物品の説明」欄には「本願意匠に係る物品は,登山用具や一般金具として使用される他,キーホルダーやチェーンの部品等の,装飾用としても使用されるものである。」との記載があるが,意匠の物品名は,もっぱら「意匠に係る物品」によって定められるのであって,「意匠に係る物品の説明」は,その物品の使用の目的,使用の状態,等物品の理解を助けることができるような説明を記載するものであるから,上記記載は,例えば,登山用具のカラビナがキーホルダーやチェーンの部品等の,装飾用として使用されることがあるとの意味のない説明をしているにすぎないものと理解するほかない