論文筆記の勉強法

*筆記練習の準備

 弁理士の論文式筆記試験を突破するには、「筆記練習(答案練習、略して答練)」の積み重ねが必須です。最終的には、非常に短い試験時間の中で、「答案構成」と「記載」が「他の受験生以上に」できる能力を身に付けなければ、合格はできません。独学者が長期化する原因の一つがこの「答案練習」にあります。

 短答試験を突破すれば、その後は、短答では問われない「論点」を勉強すれば、論文の筆記練習の準備はほぼ整ったと言えるでしょう。もう少し補足しておきますと、短答は条文通りに解答することが求められますが、論文は必ずしも条文通りとは限りません。短答は結論を訊くだけの問題ですが、論文は結論よりは「理由付け」が重要となります。したがって、条文通りではない「通説」を解答として書く場合は、そちらを記載する方が「理由付けが楽」で他の受験生に差をつけられる危険性が減ります。こういった論述のテクニック的な面の勉強も必要で、試験当日に役立つことになります。

*論述の基本形

 論文突破には、「答案練習(答練)の積み重ね」が必要となりますが、書き込みを開始する前に習得しておくべきことをとまとめておきます。まず、論述の基本形ですが、これは「法的三段論法」によるテンポの良い論述です。

  1.要件定立(要件→効果) 「...(○○条)。」

  2.当て嵌め(事実→要件) 「本問では、...。」

  3.結論(事実→効果) 「よって、...。」

 全ての設問を通して、このスタイルで記述ができれば非常に楽ですが、実際にはうまくは行きません。途中で要件の解釈を入れたり、設問によっては要件をひっくり返すことも必要になってきます。また、このスタイルだと時間が足らなくなることが多くなると思いますので、合格レベルの受験生は、「直接当て嵌め」での記述能力を身に付けています。

 次に、「お作法」的なポイントをまとめたおきます。

*形式面の注意事項

 「略字」は使ってはいけません。また、「口語的な表現」もNGです。心証が相当悪くなると思ってください。また、「汚い文字でも最初は丁寧に書く」ようにしましょう。 最後まで丁寧に書く必要はありません。最初の数行だけでOKです。最後まで丁寧な字で書いていると時間が足らなくなります。

*得点「減」にならないように、   

 多くの受験生が「やってしまう減点対象」を挙げておきます。まず、「結論を書いていない」答案です。当て嵌めまでやって結論を書いた気分になり、次の問題に移ってしまう答案を非常に多く見かけます。もったいないですよね。結論付けはそれほど難しい話ではありません。設問から「直接事項」を見つけ、それに対するオウム返しで結論付けるだけでOKです。

 次に、自分で問題(仮説)を作らない、という点です。設問に事実が書かれてなかった場合に、「○○の場合には・・・」、といった形で自分で条件設定をして解答する受験生も少なくありません。設問には「素直に答える」ことが重要です。書かれていない事実が気になっても、それを直接訊いていないなら、答える必要はありません。

 審査基準・判例を根拠とする場合の書き方にも注意が必要です。まれに見られるのが、審査基準に記載されていたことを根拠条文的に記載することがありますが、これもNGです。

 次は、心証を良くする書き方に触れておきましょう。このテクニックを身に付けるだけで、他の受験生と差を付けることができますので、有効なポイントです。

*得点「源」にするために、 

 まず、形式的な点ですが、項目を立てて「頭の中が整理されていること」を伝えることが重要です。さらに、サブ項目はインデント(字下げ)して見やすい記載にすることも、理解力をアピールする手助けをしてくれます。

 当て嵌めの丁寧さが合否を分ける問題も多く出題されますが、この「丁寧さ」が良くわからないといった受験生も多いと思います。単に文字数を多く書けば良いのでしょうか? 答えはNo.です。もっとも良いのは、「設問で使われている文言をそのままカッコ書きして当て嵌める」方法です。非常に有効です。試してみてください。

*その他

 条文で未定義の慣用語は「いわゆる」を付けましょう。例えば「均等論」や「間接侵害」です。使い分けができている受験生の答案に出会うと、それだけで、勉強の量と質の違いが窺えます。

 答案練習を始めた初期は、最初に事案分析を書くことも多いと思いますが、事案分析は殆ど得点になりません。事案から法律用語へ置き換える、例えば、「発明αを研究会で発表」→「発明αは新規性を喪失している」、といった分析であれば、悪くはないと思います。特に、時系列条件等が複雑な問題に対する事案分析として、事実把握のミス防止という目的なら意味があると思います。

 冒頭に少し説明しましたが、「要件定立→当て嵌め」の記載では時間も記載量も多くなり過ぎてしまいます。本番では「直接当て嵌め」で時間短縮できる記載テクニックを見に付けておくことが重要です。ただし、問題によっては記載ボリュームが少なくなる場合もありますので、要件定立から丁寧に書き、当て嵌めも丁寧にするなど臨機応変な記載能力を見つ付けておくことが重要となります。