知財動向 最前線

間接侵害の改正(意匠法)

2021年10月12日 10:06

改正絡みの問題は出題の可能性が高いのはご承知のことと思います。

令和元年の改正で、意匠法の間接侵害の規定(38条)が改正され、いわゆる「のみ品(専用品)」を規定している1号に加え、2号が追加されました。

第三十八条 次に掲げる行為は、当該意匠権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
二 登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品の製造に用いる物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等(これらが日本国内において広く一般に流通しているものである場合を除く。)であつて当該登録意匠又はこれに類似する意匠の視覚を通じた美感の創出に不可欠なものにつき、その意匠が登録意匠又はこれに類似する意匠であること及びその物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等がその意匠の実施に用いられることを知りながら、業として行う次のいずれかに該当する行為

イ 当該製造に用いる物品又はプログラム等記録媒体等の製造、譲渡、貸渡し若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為
ロ 当該製造に用いるプログラム等の作成又は電気通信回線を通じた提供若しくはその申出をする行為


特許法では平成14年改正で、同様の2号類型が追加された一方、意匠法では見送りとなっており、今回の改正趣旨を青本は以下のように説明しています。

青本:
二号は、令和元年の一部改正で新たに追加された規定であり、「物品の製造にのみ用いる」専用品に限らず、登録意匠等に係る物品の製造に用いる物品等であって、当該登録意匠等の「視覚を通じた美感の創出に不可欠なもの」を、その意匠が登録意匠等であること及び当該物品等が意匠の実施に用いられることを知りながら、業として譲渡等する場合についても侵害とみなすものである。こうした侵害類型は、多機能型間接侵害等と呼ばれるが、特許法においては平成一四年の改正で措置されていたものの(一〇一条二号及び五号)、意匠法では部分意匠制度により侵害の捕捉が可能と考えられたことから措置されていなかった。しかしながら、例えば、意匠権を侵害する製品の完成品を構成部品(非専用品)に分割して輸入することにより、意匠権の直接侵害を回避するなどの巧妙な模倣例が見受けられたことから、これに対処すべく、令和元年の一部改正において、意匠法においても多機能型間接侵害に関する規定を措置している。


また、平成14年の改正法解説書には、部分意匠制度の存在以外に、意匠権の効力が類似範囲まで及ぶことを挙げて、意匠法の2号類型の見送り理由が説明されています。


さて、ここで最初の疑問点が生じます。

完成品(意匠権)と部品(侵害被疑品)の関係に立つ場合、物品が非類似のため、直接侵害を問うことが難しくなり、意匠法で2号類型が見送られた理由を素直に受け入れるのは難しくないでしょうか?


次の疑問点として、2号類型の要件の一つについて、特許法と意匠法で比較してみたいと思います。

特許法の青本:
〈発明による課題の解決に不可欠なもの〉
請求項に記載された発明の構成要素(発明特定事項)とは異なる概念であり、発明の構成要素以外にも、物の生産や方法の使用に用いられる道具、原料なども含まれ得る。

意匠法の青本:
〈視覚を通じた美感の創出に不可欠なもの〉
意匠を構成する部品等に加え、物品の製造、建築物の建築及び画像の作成に用いられる道具、例えば金型等も含まれ得る。


両者の趣旨(「拡大適用」)は同じと考えて良いでしょう。
意匠法も上記「拡大適用」を図る趣旨であるならば、なおさら、意匠法における2号類型の追加無くして、特許法同様の間接侵害の適用拡大の効果を生じさせるのは難しくないでしょうか?

青本に「噛みつく」のはこれくらいにして(笑)、弁理士の短答対策としては、特許法と意匠法共に、上記「拡大適用」がされている点をおさえつつ、論文対策としては、青本記載の改正趣旨を(素直に!噛みつかないように!)再現できるよう準備しておくことが重要です!

おまけ:
間接侵害は法上定義された用語ではありませんので、論文では(特に最初の使用時は)「いわゆる間接侵害」とするほうが無難でしょう。


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