意匠法(改正)

平成26年改正 意匠法 60条の6 第2項

【現行法】 なし

【法改正】 二以上の意匠を包含する国際出願についての前項の規定の適用については、同項中「された意匠登録出願」とあるのは、「国際登録の対象である意匠ごとにされた意匠登録出願」とする。

 外国には、複数の意匠を一つの出願ですることを認めている国があります。本条はそれを想定し、外国から複数意匠を含んだ一つの出願をされた場合に、国内法へ繋ぐ役目の条文となります。

 ところで、意匠法(日本国)は、一意匠一出願が原則です。特許法は単一性の要件を満たす複数の発明を一括して一出願とすることができます(特37条)。商標法は、一商標一出願ですが複数の指定商品・役務を指定することができます。この点の相違を理解しておくことは非常に重要です。

 また、意匠の一意匠一出願ですが、これは「原則」で例外はありません。組物の意匠や「コーヒー碗と受け皿」があるじゃないか?といった疑問を抱く受験生も多いのですが、これは「多物品ではありますが意匠法条は一意匠とする」とされているものです。

 論文の記述で注意すべきは、「意匠法7条は一意匠一出願の原則を規定し、8条(組物)はその例外を規定している」といった論述をする受験生が居ます。これは、致命的です。意匠法の一出願一意匠の理解レベルが低いと判断され、心証は相当下がると思います。十分に注意しましょうね。

平成26年改正 意匠法 60条の12 第1項

【現行法】 なし

【法改正】 国際意匠登録出願の出願人は、国際公表があつた後に国際意匠登録出願に係る意匠を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後意匠権の設定の登録前に業としてその国際意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠を実施した者に対し、その国際意匠登録出願に係る意匠が登録意匠である場合にその登録意匠又はこれに類似する意匠の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。当該警告をしない場合においても、国際公表がされた国際意匠登録出願に係る意匠であることを知つて意匠権の設定の登録前に業としてその国際公表がされた国際意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠を実施した者に対しては、同様とする。

 「国際公表の効果」を規定しています。特許法で言うと65条で、条文上の違いは「又はこれに類似する意匠」にまで実施が広がっている点です。短答で狙われそうなポイントです。

 「出願公開」「国際公開」「国際公表」「国内公表」と似て非なる用語の正確な使い分けが必要ですね。良い問題とは思いませんが、引っかけ問題として出題されるかもしれません。短答試験の直前に、各用語が使用されている条文はチェックしておきましょう。それぞれ、特65条(64条)、特184条の9、意60条の12、特184条の9です。

 本条の登場で、試験勉強が進んでいる人の方が間違いやすくなるポイントがあります。設問として国際意匠登録出願が絡んだ時系列の問題です。これまでは、他の意匠登録出願がある場合は3条の2、および9条を検討し、公知事実がある場合は3条1項と2項を検討すると整理されていました。今後は、他の意匠登録出願が国際ルートからの出願である場合は、「国際公表」がされていることが前提となります。つまり、他の国際意匠登録出願が存在する場合は、上記の「4点セット」全てを検討する必要がでてきます。

 ここで、H26改正法の勉強が進んでいる人は、「国際公表がされているか否かが分からないのでは?」と思うかもしれませんが、60条の6により、意匠登録出願とみなされた出願は「必ず」国際公表がされていることになります。

【法改正】 第六十条の六
日本国をジュネーブ改正協定第一条(xix)に規定する指定締約国とする国際出願であつて、その国際出願に係るジュネーブ改正協定第一条(vi)に規定する国際登録(以下「国際登録」という。)についてジュネーブ改正協定第十条の規定に(3)(a) よる公表(以下「国際公表」という。)がされたものは、経済産業省令で定めるところにより、ジュネーブ改正協定第十条に規定する国際登録の日(以下「国際登録の日」という。)にされた意匠登録出願とみなす

 ジュネーブ改正協定10条には、国際事務局が出願を受けると不備がなければ直ちに登録し、登録は公表するとされています。本条も意匠法60条の12に関連する事項ですので短答試験での出題の可能性は高く、十分に目を通しておくことをお勧めします。

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