特許法(改正)

平成26年改正 特許法 17条の4、41条4項、43条1項

【現行法】 なし

【法改正】 第四十一条第一項又は第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)若しくは第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張をした者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第四十一条第四項又は第四十三条第一項(第四十三条の二第二項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面について補正をすることができる

 優先権主張書面の補正ができることになりました。国際調和の一環です。

 関連する改正を次に挙げておきます。まず、国内優先権の主張出願に伴う証明書の提出期間の規定です。「同時」でなくても良いことに変わります。詳細は、特許法施行規則を待たなければ判りませんが、国際調和の観点からの規定振りになるものと思われます。

[41条4項(旧)] 第一項の規定による優先権を主張しようとする者は、その旨及び先の出願の表示を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。

[41条4項(新)] 第一項の規定による優先権を主張しようとする者は、その旨及び先の出願の表示を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。

 次に、パリ優先権の主張出願に伴う証明書の提出期間の規定です。国内優先権と同様と考えて良いでしょう。

[43条1項(旧)] パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をし若しくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし又は同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。

[43条1項(新)] パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をし若しくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし又は同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。

 意匠法と商標法では改正は行われていません。また、実用新案法では国内優先権についてのみ、特許法と同様な改正が行われています。短答で狙われそうなポイントです。

平成26年改正 特許法 48条の3 第8項

【現行法】 なし

【法改正】 第五項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により特許出願について出願審査の請求をした場合において、その特許出願について特許権の設定の登録があつたときは、その特許出願が第四項(前項において準用する場合を含む。)の規定により取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報の発行後その特許出願について第五項の規定による出願審査の請求があつた旨が掲載された特許公報の発行前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。

 通常実施権の種類がまた一つ増えることになります。H23法改正前までは、35条1項、79条、80条1項、81条、176条、の5つと覚えていましたが、H23法改正で79条の2第1項が規定され、そして今回の48条の3第8項の追加で合計7つに増えました。

 今後も増えるのか?と思ってしまいますが、現在、減る方向での改正法の議論が進んでいます。職務発明の法改正で来年度の予定です。「特許を受ける権利は使用者に原始的に帰属する」あるいは「使用者に法定譲渡される」となれば、35条1項は削除されることになるのでしょうね。

 別の観点では、175条、176条に加えて、「善意に」を含む条文が一つ加わりました。口述で問われるかも知れません。

[176条]  ・・・があつたときは、当該審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。

 実際、商標法の口述試験で、『3条各号の中で「のみ」を含むのは何号ですか?』と訊かれた記憶があります。「通常実施権は何条に規定されていますか?」といった問いも考えられます。口述試験前には、見直しておきましょう。

平成26年改正 特許法 113条~120条の8

【現行法】 なし

【法改正】 (省略)

 異議の申立ての条文です。以下、H15年改正前の条文には無かった規定で、かつ、無効審判制度との対比において、注意すべき点を列挙します。

<無効審判>

[134条の2第4項] 審判長は、第一項の訂正の請求書及びこれに添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面を受理したときは、これらの副本を請求人に送達しなければならない。

[134条の2第5項] 審判官は、第一項の訂正の請求が同項ただし書各号に掲げる事項を目的とせず、又は第九項において読み替えて準用する第百二十六条第五項から第七項までの規定に適合しないことについて、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。この場合において、当該理由により訂正の請求を認めないときは、審判長は、審理の結果を当事者及び参加人に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならない。 
 

<異議申立て>

【120条の5第5項】 審判長は、第一項の規定により指定した期間内に第二項の訂正の請求があつたときは、第一項の規定により通知した特許の取消しの理由を記載した書面並びに訂正の請求書及びこれに添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面の副本を特許異議申立人に送付し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、特許異議申立人から意見書の提出を希望しない旨の申出があるとき、又は特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるときは、この限りでない。

 H15年法改正時に指摘されていた「異議申立ての利用者には審理中に意見を述べる機会が十分でないことについて不満があり、・・・」については、「訂正請求があった場合に意見書が提出できる」ことが新たに規定されています。特許異議申立ての制度趣旨について問われた場合には書く必要があるポイントとなります。 

 短答対策としても、正確に覚えていないと間違えてしまう規定で、狙われる可能性が高い条文です。

 まず、主体の相違です。無効審判は「審判長」と「審判官」が登場しますが、異議申立ては「審判長」のみです。

 「申し立てない理由についても」の規定は無効審判にはありますが、異議申立てにはありません。異議申立ての審理における職権審理については120条の2で担保されていますので規定する必要がないと解釈できますが、審判請求の審理における職権審理は153条で同様に規定されているので、なぜ、134条の2第5項で明示的に規定されているのかは改正法解説書を待つしかないようです。

 意見書の提出についても相違があります。無効審判は「訂正の請求を認めないとき」との条件が付いています。一方の異議申立ては「提出を希望しない」などの条件が付いています。条件を入れ替えて出題される可能性がありますので、注意が必要です。

 短答では、さすがに「送達」と「送付」を入れ替えて出題してくることは無いと思いますが、「送付しなければならない」を「送付することができる」に変えたり、「審理することができる」を「審理しなければならない」に変えて問題を作る可能性はありますので、十分に注意しましょう。

 最後に、申立書の要旨を変更することができる期間が短縮されています。6月の異議申立期間内であっても訂正請求がされたことによる意見書提出の通知があった後は、申立書の要旨変更が制限されることになります。

[H15改正前] 前項の規定により提出した特許異議申立書の補正は、その要旨を変更するものであつてはならない。ただし、第百十三条に規定する期間が経過するまでにした前項第三号に掲げる事項についてする補正は、この限りでない。

【115条2項】 前項の規定により提出した特許異議申立書の補正は、その要旨を変更するものであつてはならない。ただし、第百十三条に規定する期間が経過する時又は第百二十条の五第一項の規定による通知がある時のいずれか早い時までにした前項第三号に掲げる事項についてする補正は、この限りでない。

平成26年改正 特許法 118条 第1項

【現行法】 なし

【法改正】 特許異議の申立てについての審理は、書面審理による。

 短答に出題される可能性が高い条文です。なぜかというと、対応する商標法の条文を以下に示します。商標法では、口頭審理への変更の可能性がありますが、特許法にはそれが無く簡単に問題が作れるからです。

[商標法43条の6] 登録異議の申立てについての審理は、書面審理による。ただし、審判長は、商標権者、登録異議申立人若しくは参加人の申立てにより、又は職権で、口頭審理によるものとすることができる。

 さらに、H15年改正の前までは、特許法でも同様な規定になっていました。「ベテラン」受験生が引っ掛かりそうなポイントです。以下が当時の条文です。

[特許法117条(H15改正前)] 登録異議の申立てについての審理は、書面審理による。ただし、審判長は、特許権者、特許異議申立人若しくは参加人の申立てにより、又は職権で、口頭審理によるものとすることができる。

 たとえば、「特許異議の申し立てについての審理は、審判長の職権で口頭審理とすることができる。○か×か?」といった出題が予想されますので、引っかからないように、直前チェックをして本番に臨みましょう。

 論文で改正趣旨が問われた場合には、書いても良いポイントとなります。H15年の改正法解説書には特に問題として指摘されていませんでしたが、「特許庁からのH26年改正法の説明」では、特許異議申立人の負担軽減(特許庁に出向かないと口頭審理ができない)を目的としているとの説明がされています。参考にしてください。

平成26年改正 特許法 123条 第2項

【現行法】 特許無効審判は、何人も請求することができる。ただし、特許が前項第二号に該当すること(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に該当することを理由とするものは、当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者に限り請求することができる。

【法改正】 特許無効審判は、利害関係人(前項第二号(特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に該当することを理由として特許無効審判を請求する場合にあつては、特許を受ける権利を有する者)に限り請求することができる。

 無効審判の請求主体が、「何人」から「利害関係人」に変わります。H15年改正で異議申し立て制度を無効審判制度に包摂する際に、請求主体を広い方の異議申し立ての請求主体である「何人」として規定された経緯があります。

 H26年改正で、異議申し立て制度が復活しますので、それに合わせて、無効審判の請求主体も「もとに戻る」ことになります。注意が必要なのは、「もとに戻る」といっても、もともとあった条文が復活するということではありません。この点、青本123条の参考欄に関連記載があるので引用しておきます。

<青本19版123条、参考>  〈請求人適格としての利害関係〉

 旧法八四条二項は「無効審判ハ利害関係人及審査官ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得」べき旨を規定していたが、現行法においてはこれらの請求人適格に関する規定を削除した。

 旧法においては利害関係人という要件があるために無効審判においてしばしば利害関係の有無が争われ、この争いのために数年を要することも稀ではなかった。しかも、利害関係の有無が争われている間は本案の審理にははいらないのであるから、被請求人が利害関係についての争いを審理を遅延せしめるために利用することすらあった。

 H26年改正において、無効審判の請求主体を「利害関係人に限る」とする規定は、「新設(旧法は対象外)」されるというのが正解です。青本に記載されている「審理の遅延」という問題をどう捉えているのかについては、改正法解説書を待たなければ特許庁の見解は判りませんね。

 口述で訊かれる可能性があると思いますので、法改正の経緯と合わせて、現行法の要件を整理しておきましょう。

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