記事のアーカイブ
査定後の分割(後編):上位概念分割
2021年11月01日 09:57
今回は、査定後の分割テーマの「後編」として、上位概念分割のダブルパテント問題(懸念)を取り上げます。まず、ダブルパテントの条文(39条)を確認しておきましょう。第三十九条 同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。2 同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。39条1項は異日の場合、同条2項は同日の場合が
査定後の分割(中編):時期的要件
2021年10月28日 11:39
前回は「改正趣旨」を取り上げました。今回は短答向けとなりますが、査定後の分割の「時期的要件」について審査基準の注意事項を中心に確認していきたいと思います。まずは、条文の確認からです。第四十四 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達が
査定後の分割(前編):趣旨
2021年10月24日 10:00
査定後の分割は、H18年改正で導入された制度です。まず、条文から確認しましょう。(特許出願の分割)第四十四条 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。三 拒絶をすべき旨の最初
実施ができない事例の拒絶理由は?
2021年10月20日 10:12
「実施ができない事例の拒絶理由は?」と問われたら、どのように答えますか?実施ができない事例は、以下の3つのレベルで整理ができます。 ①発明該当性(未完成発明) ②産業上の利用可能性 ③記載不備①は、理論的に正しくないレベルです。②は、理論的には正しくても、実際的に実施ができないレベルです。③は、理論的にも実際的にも、発明者本人は実施できますが、出願明細書の記載レベルに問題があり、第三者が実施できないレベルです。①と②については、審査基準で説明がされていますので、その内容を確認しましょう。審査基準:第 29 条第 1 項柱書に規定されている特許要件は、以下の二つである。(i)...
複数意匠「一出願」は可能?
2021年10月16日 10:10
令和3年4月1日に施行された改正意匠法の中で、7条関係の内容を確認しておきましょう。まず、7条の改正条文からです。改正前の7条:意匠登録出願は、経済産業省令で定める物品の区分により意匠ごとにしなければならない。改正後の7条:意匠登録出願は、経済産業省令で定めるところにより、意匠ごとにしなければならない。「物品の区分」が削除されたことに伴い、意匠法施行規則の物品区分表(別表第一)が廃止され、複数意匠「一括出願」が可能となりました。廃止された物品区分表の代わりに例示されている「意匠に係る物品等の例」はこちらを参照ください。別添:意匠に係る物品等の例:https://www.jpo.go.jp/sy
間接侵害の改正(意匠法)
2021年10月12日 10:06
改正絡みの問題は出題の可能性が高いのはご承知のことと思います。令和元年の改正で、意匠法の間接侵害の規定(38条)が改正され、いわゆる「のみ品(専用品)」を規定している1号に加え、2号が追加されました。第三十八条 次に掲げる行為は、当該意匠権又は専用実施権を侵害するものとみなす。二 登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品の製造に用いる物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等(これらが日本国内において広く一般に流通しているものである場合を除く。)であつて当該登録意匠又はこれに類似する意匠の視覚を通じた美感の創出に不可欠なものにつき、その意匠が登録意匠又はこれに類似する意匠であること及び
空虚な権利?
2021年10月08日 11:21
特許権の効力は68条に規定されています。第六十八条 特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。「ただし書」については、青本に説明がされています。青本:ただし書は、特許権について専用実施権を設定した場合は、その設定行為で定められた範囲において特許権者の独占的な地位は失われる旨を規定したものである。たとえば、特許権について関東地区の専用実施権が設定された場合は、その関東地区において、特許権者は自ら特許発明を実施できなくなるわけである。また、特許権の
意匠とは?(令和元年改正)
2021年10月04日 11:50
令和元年改正で、意匠の定義の見直しが行われ、具体的には、「建築物(の形状等)」と「画像」が保護対象に加えられました。第二条 この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第二項、第三十七条第二項、第三十八条第七号及び第八号、第四十四条の三第二項第六号並びに第五十五条第二項第六号を除き、以下同じ。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう
出願分割の"隠れた"要件とは?
2021年09月30日 10:19
特許出願の分割の実体的要件(主体・時期・手続き以外の要件)の当て嵌めについて確認していきましょう。まず、条文の確認からです。第四十四条 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき
パリ優との対比における国優の効果(後半)
2021年09月26日 03:01
前回に続き、パリ優先権の効果との対比における国内優先権の効果を確認することにしましょう。今回は、パリ優先権の「後半」の効果(第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない)についてです。パリ条約 第4条 優先権B.すなわち,A(1)に規定する期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は,その間に行われた行為,例えば,他の出願,当該発明の公表又は実施,当該意匠に係る物品の販売,当該商標の使用等によつて不利な取扱いを受けないものとし,また,これらの行為は,第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない。青本には、パリ優先の「前半」および「後半」に該当する国内法の条文が説明されており、一
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